関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

知られざる戦後の生活誌―小樽・後志の樺太引揚者たち―

井手正広はじめに 私は今回の研究テーマを設定するに当たり、以前の調査で京都府舞鶴市にある引き揚げ記念館を訪問し、引き揚げ者に対して大きな興味を抱いたこと、また実際に私の母方の祖父が、シベリア抑留からの引き揚げ者であり、当時の話をよく聞かされ…

祝祭としての運動会

並川 梓はじめに 北海道の運動会は、春(5月下旬から6月上旬)に行われるのが一般的である。小樽も例外でなく、市内の公立小学校全27校が毎年5月の最終から6月の第一週目の土日に運動会を開催している。本州とは違う時期に運動会をすることには、気候の関係…

小樽における修験道

田中李沙はじめに 日本には無神論者が多い。修験道を調査している私もその1人だ。しかし海外では宗教をもたないことが極めて異例だと考えられる。人間の基礎を形成していく上で宗教はとても大切なものなのではないかと思った。無宗教が一般化している日本だ…

オタモイの記憶―遊園地と地蔵―

宮下毬菜 はじめに オタモイ海岸は、小樽市の北西部にあり、高島岬から塩谷湾までの約10kmに及ぶ海岸線の一部で、付近には赤岩山(371m)など標高200m前後の急峻な崖と奇岩が連なっている。一帯は昭和38年(1963年)ニセコ積丹小樽海岸国定公園に指定され、祝津…

生き残った小樽の和菓子屋たち

村川美有はじめに「小樽」といえば、今ではチーズケーキやバタークッキーなど洋菓子のイメージが強い。しかし、洋菓子土産が有名になる前、小樽は和菓子で有名であった。昔に比べてずいぶんと和菓子屋の数は減ってしまったようだが、今もなお残る和菓子屋に…

小樽の在日韓国人

北村美季はじめに 北海道では、大正5年あたりから北海道炭鉱汽船株式会社による朝鮮人労働者の大量採用が始まった。一時は朝鮮人工夫の労働力は「良く服従する」、「優秀な体力」により好評で1000人を超え、増加していたが、昭和5年以降の国内不況により募集…

最後のガンガン部隊―小樽の行商人「吉田のおばあちゃん」の暮らしと思い―

大西佐和はじめに ガンガン部隊とは昭和20年代末〜30年代に活躍した行商人である。ガンガン部隊が背負っていたブリキ缶の中には市場で仕入れた鮮魚や乾物が入っており、早朝から列車を使いそれらの商品を炭坑や地方に住む人々へ売りに行った。 目的地の…

小樽まつり―神社のまつりとまちのまつり

中川 保代はじめに 小樽市には約16の神社がある。毎年5月中旬から各神社で毎週のように例大祭が行われ、なかでも水天宮神社、龍宮神社、小樽総鎮守住吉神社の例大祭は小樽三大祭りと呼ばれている。三大祭りのトリを務める住吉神社例大祭は毎年7月14日、15日…

鰊漁場の200年

岡本千佳 はじめに (1) 北海道では江戸時代の文化年間(1800年ごろ)から大正時代にかけて、鰊漁が盛んに行われていた。最も豊漁となった大正14年には、小樽だけで鰊の年間漁獲量7万5,000石を記録した。注:生鰊200貫(750kg)が1石 収穫高…

小樽の印

岩本 悠 はじめに 小樽と聞いて思いつくものと言えば、ガラス、運河などであろうか。しかし、それだけではない。小樽には印がある。印(しるし)は家の近くの酒屋や魚屋の看板にも見ることができるような、日本人には見慣れたマークであるが、小樽では実にた…

ベネツィア化する小樽!?

那須くららはじめに ノスタルジックな街並みが自慢の小樽。修学旅行などで訪れた方も多いのではないだろうか。今回は小樽市にある表象について取り上げる。外国のシンボルがよく見受けられる堺町通り。小樽運河の歴史からさかのぼり、現在の小樽の姿を追った…

ハマカセギの男たち ―小樽港と港湾荷役労働者―

渕 修平 はじめに 現在、レトロな街並みで北海道の有名観光地となっている小樽。中でも小樽運河(下写真)は観光地小樽のメインの一つとなっている。多くの観光客が歩く運河沿いは、かつて艀と倉庫の間で荷役が行われていた。今でも運河沿いに一部残っている…

小樽と鉄工所-海から陸への変遷史-

橘 将吾はじめに 小樽は観光都市としての色を強く持ち、運河を中心としたノスタルジックな街並みを売り出しているが、古くから港町としての機能を持った都市でもあった。現在では太平洋岸貿易中心の流れにのみこまれてかつての勢いを失っている小樽港も江戸…

ムラサキの運行を支えた鉄道員−小樽、国鉄貨物輸送の歴史−

郄山斉明はじめに北海道初の鉄路として1880年11月に、手宮−札幌間が開業。これが小樽における鉄道の歴史、手宮線の始まりである。開通当初、鉄道輸送の主な目的は道央で産出される石炭の輸送であった。そして、のちに道内有数の炭鉱幌内まで延伸された…

会費で成り立つ結婚式

冨田歩 序章 北海道と冠婚葬祭 「会費制結婚式」の存在を知っているだろうか。北海道ではごく当たり前に行われている結婚式である。北海道は明治時代になって屯田兵により開拓された地域で、北海道民の祖先の多くは、明治時代から大正時代にかけて日本全国の…

小樽と仏壇

比良真実子はじめに 私たちの生活の中に何気なくある仏壇。日本全国では各地に仏壇の生産地があるが、北海道内で仏壇の生産地といえば小樽市である。その小樽仏壇についての調査をまとめる。第一章 仏壇とは (1) 仏壇とは 仏壇には、漆塗りに金箔が装飾さ…

水道局の記憶−小樽の「水道数え唄」から

高佑太はじめに:小樽の街と水 古くから小樽の水はうまいと定評がある。その理由は3つあるとされている。①豊かな自然と水源環境に恵まれ、水源地の上流には水質を汚染する雑排水もなく、原水の水質が良好であること。②ミネラル分を適度にバランスよく含んで…