関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

「TSF」の構造―ウェブ上の投稿小説における構造的共通性―

伊藤 環

 

【要旨】

 

 本研究は、インターネット上に投稿された個人製作の「TSF」と呼ばれる男性から女性への変身などを題材とした小説について、インターネット上の個人サイトおよび投稿サイトをフィールドとして分析を行うことで、これらの小説に共通する構造を明らかにしたものである。本研究において明らかになった点は以下の通りである。

 

 

 

 本研究の題材とした「TSF」作品は、登場人物が異性へと「移り変わる」ことを題材としたものである。これに基づいて3人の制作者の作品に対して「シーケンス分析」の手法を用いることによって、それぞれの共通する構造を明らかにした。

 まず、分析に必要である話素を設定し、「苦悩・葛藤①(A)」「欲求(B)」「出会い遭遇①(C)」「苦悩・葛藤②(A2)」「出会い・遭遇②(C2)」「変身(D)」とした。

 上記に基づいて分析を行った結果、今回対象とした物語の基本的な話型として「A-B- C-A2-C2-D」が分かった。また、そのバリアントとして主に「C-D」型および「A-C-D」型が存在することが判明した。

 分析によって、インターネット上で不特定の人々が「TSF」と呼ばれるジャンルにおいて制作した作品においてある程度共通する構造が存在し得ることが証明された。

 

 

 

【目次】

 

序章 「TSF」

 第1節 「異性への変身」への関心

 第2節 「TSF」とは何か

 第3節 「TSF」の下位概念と「TSF」に類似する概念

 

第1章 研究の目的と手法及び対象

 第1節 研究の目的

 第2節 研究の手法及び対象

 (1) 研究に用いる手法

 (2) 研究の対象

 

第2章 調査と考察

 第1節 「風祭玲氏の作品」の構造

 (1) 分析とその結果

 (2) 第1節単体での考察

 第2節 「愛に死す(アイニス)氏の作品」の構造

 (1) 分析とその結果

 (2) 第2節単体での考察

 第3節 「山田天授氏の作品」の構造

 (1) 分析とその結果

 (2) 第3節単体での考察

 第4節 3つの作品群に共通する構造

 

第3章 筆者の黒歴史

 第1節 筆者の作品

 第2節 分析と結果

 第3節 考察

 (1) 物語の構造

 (2) 私がこの文章のどこに魅力を感じながら制作したか

 

結語

 第1節 総括

 第2節 今後の展望と課題

 第3節 謝辞

 

付録


参考文献

参考URL

 

 

 

【図表】

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話素抽出例

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物語の構造の例