関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

ブルーグラスを生きる人々―神戸・宝塚をフィールドとして―

ブルーグラスを生きる人々―神戸・宝塚をフィールドとして―

水河 美咲

【要旨】
 本研究は、少数に支持されるブルーグラスミュージックが受け継がれる理由について、神戸・宝塚をフィールドに実地調査を行うことで、その理由を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点はつぎの通りである。

1.アメリカ軍が日本に駐屯した際流れた音楽がブルーグラスだった。

2.ブルーグラスはマイナーな音楽だった為共有の場が必要だった。そこで生まれたのがコーヒーハウス「ロスト・シティー」である。

3.ロスト・シティーがある神戸港には多くのアメリカ兵が訪れた為、アメリカ文化が栄えると共にブルーグラスも栄えた。

4.本場アメリカ人の前で演奏することで若者は腕を磨き、同時に技を盗んだ。ロスト・シティーも例外ではなく、今でも尊敬される程のブルーグラッサーが誕生した。

5.ロスト・シティー閉店後、ブルーグラスを共有する場は枝分れしていった。

6.コーヒーハウスとして枝分れしたのがコーヒーハウス「シルクロード」である。

7.ブルーグラスを知るきっかけは様々であるが、オリジナリティと技術力、仲間意識を重視するという共通点がある。

8.情報拠点として枝分れしたのがB.O.Mサービスである。

9.技術を盗むコーヒーハウスとは違い、宝塚ブルーグラスフェスティバルは出演することがステータスであり、ここにも仲間意識がある。

 これらを総括すると、ポピュラーでない音楽故に共有する場が必要であり、そこで技術が磨かれる。その技術を習得したものが仲間として迎え入れられる為、仲間内で音楽が受け継がれることが可能であった。以上が神戸と宝塚のブルーグラスを通してわかった、少数の人々から支持を得る音楽が根強く受け継がれ途絶えない理由である。

【目次】

序章 ―――――――――――――――――――――――――――――3

 第1節 問題の所在---------------------------------------------4 

 第2節 ブルーグラス-------------------------------------------4

 第3節 アメリカから日本へ------------------------------------13

第1章 コーヒーハウス「ロスト・シティー」 ――――――――――17

 第1節 ロスト・シティー--------------------------------------18

 第2節 ブルーグラス45とロスト・シティー・キャッツ----------19  

第2章 コーヒーハウス「シルクロード」―――――――――――――23

 第1節 シルクロード------------------------------------------24

 第2節 ジョッシュ大塚さん------------------------------------30

 第3節 シャン石川さん----------------------------------------35

 第4節 バンク山本さん----------------------------------------38

 第5節 ジミー高階さん----------------------------------------40

第3章 B.O.Mサービス―――――――――――――――――――45

 第1節 B.O.Mサービス------------------------------------46

 第2節 渡辺敏雄さん------------------------------------------51

 第3節 秋元慎さん--------------------------------------------52

第4章 宝塚ブルーグラスフェスティバル―――――――――――――55

 第1節 歴史--------------------------------------------------56

 第2節 現状--------------------------------------------------56

結語――――――――――――――――――――――――――――――61

参考文献――――――――――――――――――――――――――――63

【本文写真から】

写真1 ロスト・シティーで演奏する看板バンドのブルーグラス45


写真2 シルクロードジャムセッションをする人達。椅子に座りながら演奏する人や聴く人もいる。このような場でオリジナリティや技術力を磨く。


写真3 情報拠点となっているB.O.Mサービス


写真4 宝塚ブルーグラスフェスティバルの全体図。山奥で行われ、キャンプ方式をとっている。


写真5 目次の一部。多くの出演者が顔見知りだといい、仲間意識の強さを感じ取れる。

【謝辞】
 本研究の為の調査にご協力いただいた皆様には大変感謝しております。突然の訪問にも関わらず何度もお時間を割いて頂き、資料を提供して下さり、シルクロードさんのご紹介までして下さったB.O.Mサービスの渡辺敏雄さん、秋元慎さん。大変お世話になりました。シルクロードさんでお話しを聞かせて頂いたジョッシュ大塚さん、シャン石川さんと奥様、バンク山本さん、ジミー高階さん、その他ブルーグラスについてお話し下さった方々。楽しいお時間にお邪魔したにも関わらず、右も左もわからない私を優しく受け入れて下さったことは忘れません。マスターの富山さんにはお話しを伺う際何度も助けて頂いたうえ、その後も資料をご提供頂き大変感謝しております。
 皆さまのご協力がなければ本論文の完成は成し得ませんでした。ブルーグラスにまつわることはもちろん、その他楽しいお話しまでお聞かせ頂き音楽に触れ、調査を忘れて楽しんでしまう程でした。本当にありがとうございました。ウェブ上ではありますが、この場をかりて感謝申し上げます。