関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

両替商のゆくえ-奈良県桜井市における商家の近代-

植田悠渡

 

【要旨】

 本研究は、奈良県桜井市と大和高田市に店を構える服地屋「ぜに宗」で実地調査を行ない、代表者の小西宗日出氏と小西一恵氏にお話を伺うことで、時代・人々の流れや扱う商品の変化に対応してどのように商売を続けてきたのか、そして呉服・服地屋として歩んだ近代から現代に至るまでの歴史を記述したものである。本研究で明らかになった点は、以下のとおりである。

 

1.現在、服地屋「ぜに宗」を経営する小西家の発祥は奈良県桜井市の三輪で、創業した江戸時代の寛政2(1790)年当初は両替商として商売をしており「銭屋宗四郎」という屋号を掲げていた。

2.やがて質屋になった「銭屋宗四郎」に呉服が大量に集まるようになる。明治時代を迎えて周りの質屋が銀行に変わっていく中、呉服・服地屋としての営業を始める。

3.桜井市の本町通商店街に店を移し営業を始めた「ぜに宗」は、やがて大和高田市の天神橋筋商店街と奈良市の餅飯殿商店街にも出店し、奈良の三大商店街と言われた場所での営業をするまでに成長した。

4.服地販売の全盛期に桜井店からはスーパーニチイ天理店、大和高田店からはスーパーニチイ大和高田店・西友大和郡山店へ服地部門でのテナント出店を展開し、「薄利多売」を実現した。

5.桜井店の代表である小西宗日出氏は「ぜに宗」の経営の傍ら、「桜井まちづくり株式会社」の代表取締役会長を務め、商店街の活性化や桜井市の都市再生事業に熱心に取り組んでいる。

6.現在は桜井店と大和高田店の二店舗で営業しているが、どちらも周囲に空き店舗が増える中で、客の大半を占める高齢者との対話を重視した接客を心掛けている。

 

 

【目次】

序章
 はじめに

第1章 「銭屋宗四郎」から「ぜに宗」へ
 第1節 両替商「銭屋宗四郎」
 第2節 三輪の小西家
 第3節 「ぜに宗」の誕生

第2章 桜井市本町通商店街への出店
 第1節 出店の経緯
 第2節 スーパーニチイ天理店
 第3節 「ぜに宗」の現在
 第4節 小西宗日出氏とまちづくり

第3章 大和高田市天神橋筋商店街への出店
 第1節 出店の経緯
 第2節 スーパーニチイ大和高田店
 第3節 西友大和郡山店
 第4節 「ぜに宗」の現在

結語
 総括

謝辞

参考文献

参考URL

 

【本文写真から】

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写真1 昔ながらの立派な屋敷が立ち並ぶ三輪の街並み

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写真2 小西家の屋敷跡

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写真3 小西家の屋敷の住所

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写真4 ぜに宗桜井店

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写真5 ぜに宗桜井店の店内

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写真6 ぜに宗大和高田店

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写真8 ぜに宗大和高田店の店内


【謝辞】

 本論文の執筆にあたり、快くご協力してくださった小西宗日出氏、小西一恵氏をはじめ、今回の調査でお世話になった方々に心より御礼を申し上げます。お店での丁寧なご対応、詳しいお話、貴重な資料のご提供など、お忙しいにも関わらず長時間に渡る取材で家族や店の歴史を教えてくださったことで論文の執筆が進んだことはもちろん、自分の足で歩いて見た街の景色や資料を通して桜井市と大和高田市についての知識も深まり、とても良い経験となりました。本当にありがとうございました。