【要旨】
以上、本研究では、Instagram上の花嫁コミュニティを主なフィールドに、花嫁コミュニティ内で生まれ続けるフォーク・アイディア(フォークロアとして何らかの社会的コンテクストを共有する人びとの間で生み出され、生きられるアイディア)について、現在の結婚式に関するアイディアの生まれ方について明らかにしたものである。
本研究で明らかになった点は、次のとおりである。
- 2014年までの結婚情報誌登場前までは事業社や親族からの情報提供、慣習の教えが主だった。結婚情報誌登場後からは結婚情報誌が事業社から情報収集を始め花嫁たちへ情報提供という形に変化している。
- 2014年から2016年のInstagramが日本で普及するまでの間は、ブログやmixiで結婚式に関する情報を発信していた。花嫁たちにとっては新たな情報収集のツールが発生したことにより、ネットから自身で情報収集が容易に出来るようになった。
- 2016年からは日本でもInstagramが普及し、先輩花嫁や結婚式を控える花嫁たちがアカウントを持った。情報発信や情報収集が簡単に行えるようになった。また#(ハッシュタグ)を用いたコミュニティの発生により、情報共有がさかんに行なえるようになった。このことから、結婚情報誌や事業社からの情報提供よりも花嫁自身が情報発信や収集をし、より新しいオリジナルのアイディアを作っていく環境ができたのではないか。
- 「#日本中のプレ花嫁さんと繋がりたい」のハッシュタグを用いることで、日本全国の花嫁や花嫁を卒業した卒花嫁とも顔を直接合わせずに情報交換が出来る。このハッシュタグが花嫁コミュニティの中では最大級のコミュニティであるため、この「#日本中のプレ花嫁さんと繋がりたい」をつけることが花嫁コミュニティに参加する第一歩なのではないか。Instagramの投稿数は増加し続けている。
- 「#日本中の卒花嫁さんと繋がりたい」のハッシュタグは、お譲りを求める花嫁や、既に結婚式を経験した花嫁がどのようなアイディアを結婚式で使ったのか、どのようなことで苦労したのか、どのようなスケジュールで進めていったのか等が投稿されている。また、卒花してからのハネムーンでの後撮りの様子や子どもができ母になるところまでを投稿している花嫁もいる。
- 「#プレ花嫁の悩み」は、実際に悩んでいることや花嫁ならではの思いが投稿されるコミュニティであり、内容は様々である。同じような悩みを持つ人や誰かに伝えたいけれど理解してくれるのは同じ立場の人、といった思いが垣間見える。投稿に対するコメント欄も共感のコメントや励ましのコメントが多数見受けられた。
- 「#花嫁DIY」は近年主流になってきている結婚式グッズのDIYに関する投稿が発信されるコミュニティである。アイディアそのものやDIYをお手伝いする代行業者、オリジナリティを求め作成したものをそれぞれの立場から発信している。人とは少し違ったものを、私なりのこだわりをという思いからこの#では新しいアイディアが更新され続けている。
- 「#ブーケトス」が主流だった時代から、変化しつつある。近年は未婚の招待客が少ない、男性が楽しむことができない、面白い演出をといった声が多くなってきているからだ。ブーケをトスする代わりにお菓子やコスメ、ぬいぐるみなどそれぞれのオリジナリティな演出が増えてきている。
- 「#フラワーシャワー」も「#ブーケトス」と同じく、アイディアが生まれ続けているハッシュタグの代表例の一つである。生花や造花ではなく、折り鶴や星型の紙、ミッキーの紙、リボンなどが増えてきている。こちらも、オリジナリティを求める演出や、テーマに合わせた個性を見ることが出来る。
- Instagram上での花嫁コミュニティが普及し活発化しているため、結婚情報誌が情報発信に関して先行していた時代とは異なる姿を見せている。花嫁たちが直接的に情報発信・収集をすることが可能になったからである。よって、花嫁コミュニティがアイディア先行する、結婚情報誌も最近流行している演出などを掲載していく形をとっている。Instagram上の花嫁コミュニティが一番情報が早く確認しやすく、よりリアリティがあるという利点も関係している。
【目次】
序章
はじめに
第1節 問題の所在
第1章 花嫁とメディア、SNSの変遷
第1節 〜2014年
第2節 2014年〜2016年
第3節 2016年〜
第2章 Instagram上の花嫁コミュニティ
第1節 #日本中のプレ花嫁さんと繋がりたい
第2節 #日本中の卒花嫁さんと繋がりたい
第3節 #プレ花嫁の悩み
第3章 花嫁コミュニティと結婚情報誌
第1節 #花嫁DIY
第2節 #ブーケトス
第3節 #フラワーシャワー
結語
参考文献・参考URL一覧
【本文写真から】