関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

「腕守り」の民俗誌

【要旨】
 本研究は、兵庫県播州地域をフィールドに、播州の人々とそこで行われる秋祭り、また秋祭りで使われる「腕守り」というお守りとの関係について調査を行い、腕守りの広がりや変化の経緯、そこに介在する播州の人々の祭りへの思いを論じたものである。本研究で明らかになった点は以下の通りである。

1. 腕守りの研究は、これまでほとんどされてこなかった。
2. 腕守りは、もともと、女性が男性の祭りでの無事を祈って作ったのが始まりである。
3. 腕守りは松原八幡神社秋季例大祭で生まれた。
4. 松原八幡神社秋季例大祭では、腕守りはなくてはならないものであり、屋台の練り子全員が腕守りをつけている
5. 腕守りは、2000年ごろ松原八幡神社から他の神社に広まっていったが、女性が男性に腕守りを贈るという慣習は次第に薄れて行った。しかし、坊勢の恵美酒宮天満宮だけは、慣習ごと腕守りが伝わった形跡がある。
6. 腕守りに刺繍される絵柄は、松原八幡神社から離れるほど派手な物になる傾向がある。
7. 神社によっては、腕守りを首からかけたり、廻しにくくったりしている人もいる。

【目次】
序章 問題と研究史
 第1節 問題の所在
 第2節 研究史
第1章 播州の祭礼
 第1節 播州の秋祭り
 第2節 松原八幡神社秋季例大祭
第2章 祭礼と「腕守り」
 第1節 祭り装束と「腕守り」
 第2節 「腕守り」を作る
 第3節 祭り月
 第4節 祭りのあと
第3章 「腕守り」の広がり
 第1節 「腕守り」の地域的拡大
 第2節 「腕守り」の変化
結語
文献一覧

【本文写真から】

腕守り

腕守りの中に入れられる神社の護符

仕立てる前の腕守り

練り子の腕に巻かれた腕守り

廻しに腕守りを巻いた例


【謝辞】
 今回の研究にあたり、たくさんの方々に協力をしていただいた。大変お忙しい中インタビューを受けてくださった「きもの継松庵つぎたに」の継谷芳久さん、「北条刺繍」の北条忠士さん、「わくわく工房」の松井節子さん、その他、祭り中に写真を撮らせていただいたり、お話を聞かせていただいた各村の練り子の皆さん、本当にありがとうございました。