関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

甦る修験の道−大峰南奥駈道の再生をめぐって−

甦る修験の道−大峰南奥駈道の再生をめぐって−
田中李沙

【要旨】
 本研究は、熊野古道の1つ大峰奥駈道をフィールドに実地調査を行うことで、大峰南奥駈道を再興した新宮山彦ぐるーぷと青岸渡寺率いる熊野修験の復活を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、つぎのとおりである。
1.青岸渡寺率いる熊野修験は、新宮山彦ぐるーぷの南奥駈道再興がなければ実現していない。
2.新宮山彦ぐるーぷは、道や山小屋の整備、行者の接待を行っている。
3.新宮山彦ぐるーぷは、かつて山岳団体だった頃の山の知識を生かし、行者を指導する立場に立つこともある。
4.平次宿の下には、中国北宋時代の硬貨や新宮山彦ぐるーぷが埋めたタイムカプセルが埋まっている。
5.大峰奥駈修行と葛城修行では、勤行の行い方に大きな違いがある。
6.新宮山彦ぐるーぷが行者を接待する理由は、行者は接待を受けた分、受けた恩恵を別の人に返していって欲しいという想いがあるからだ。
【目次】
序章―――――――――――1 
 第1節 問題の所在・・・・・・・・・・2
 第2節 修験道とは・・・・・・・・・・2
第1章 大峰奥駈道と奥駈修行――――――――――――5
 第1節 前近代の大峰奥駈道・・・・・・6
 第2節 明治以降の大峰奥駈道・・・・・・7
 第3節 青岸渡寺と新宮山彦ぐるーぷ・・・・8
第2章 峰入りの参与観察――――――――――――24
 第1節 春の峰入り(1)・・・・・・・・・・25
 第2節 春の峰入り(2)・・・・・・・・・・35
 第3節 秋の峰入り・・・・・・・・・・・・84
第3章 大峰奥駈修行から葛城二十八宿へ――――――――――――85
 第1節 葛城山と葛城二十八宿へ・・・・・・・・・・86
 第2節 熊野修験と葛城二十八宿・・・・・・・・・・86
 第3節 葛城二十八宿の参与観察・・・・・・・・・87
結語――――――――――――111
文献一覧――――――――――――114
あとがき――――――――――――115
【本文写真から】

写真1:大峰奥駈道での修行風景。

写真2:接待をする新宮山彦ぐるーぷとそれを受ける行者。

写真3:行仙宿の様子。

写真4:南奥駈道管理棟の中。

【謝辞】
調査の実施にあたり貴重な時間を割いて協力してくださった、青岸渡寺副住職 高木亮英氏、新宮山彦ぐるーぷ世話人代表 玉岡憲明氏、熊野修験先達 花井淳也氏に深く感謝致します。その他、熊野修験・葛城修験参加者の皆様、新宮山彦ぐるーぷの皆様など、多くの方々にインタビューやお話を伺わせて頂きました。これらを快く引き受けて頂き、協力していただいた皆様へ心から感謝の気持ちと御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。