関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

天道総天壇の来歴―中華系新宗教の日本における展開―

田中瑞稀

 

【要旨】本論文は、一貫道系新宗教天道総天壇について、文献調査及び実地調査を行うことで、今日まで組織がどのように発展してきたのかを明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、次のとおりである。

 

1.天道総天壇の組織運営を携わる領導理事会の理事長を務めた徐錦泉は、2018年10月13日に亡くなっている。現在、彼の魂は「対極世界」という未来の世界にいると信者の間で信じられている。

 

2.「夢ノート」というノートに夢や目標を書くことで、対極世界にいる徐錦泉に思いが通じてパワーを得ることができるとされる。

 

3.「霊数」と「霊格」という考え方がある。霊数とは「たましいの輝きの度数」、霊格とは「たましいの段階、レベル」であり、霊格を上げることが天道の主神老との約束であるとされる。霊数は「五聖の道具」の使用や、「金剛甘露」という精霊が宿った食べ物を食べたり、使ったりすることで上げることができる。

 

5.天道総天壇は菜食主義であるため肉・魚を食べてはいけなかった。しかし、細分化した魂を1つにまとめ、人間への転生を早めるという考え方から魚は食べても良いことになった。

 

6.総本山弥勒寺における稲荷社や地蔵、靖国神社など他の宗教や民間信仰の要素を含む建造物は、一貫道・天道の教義である五教合一、万教帰一が根底にある。

 

7.現在、天道総天壇では一貫道の神人連絡法である霊査を行っていない。平成5年から「鳴り護摩」という儀式が始まり、この儀式中に行われる神人連絡法を「霊査」と呼んでいる。

 

【目次】

序章

 

第1章 前史としての一貫道

第1節 一貫道の起源

第2節 中国での展開

第3節 台湾への伝播

 

第2章 天道と天道総天壇

第1節 日本への伝播

第2節 「天道」の分派

第3節 天道総天壇

 

第3章 国父徐錦泉

第1節 入信以前

第2節 天道との出会い

第3節 国父としての徐錦泉

第4節 国父の死

 

第4章 教義・聖地・儀礼

第1節 教義

(1)主神・世界観

(2)得道・積得

(3)三曹普渡

(4)菜食主義

(5)霊格・霊数・霊団

(6)精霊

(7)対極世界

(8)泉珠神国

第2節 聖地

第3節 儀礼

(1)飛鸞宣化・霊査

(2)修霊超度・祖霊超抜

(3)護摩壇

 

第5章 信者と組織

第1節 台湾人信者

第2節 日本人信者

第3節 教団組織

 

結語

 

付論 日本における一貫道系新宗教

第1節 孔孟聖道院

第2節 先天大道日本総天壇

第3節 道徳会館

第4節 忠恕道院

 

謝辞

 

文献一覧

 

【本文写真から】

写真1 天道総天壇総本山 玉皇山弥勒寺

写真2 徐錦泉国父

*出展:天道総天壇公式ウェブサイト(徐錦泉国父 (tendo.net),2023年1月14日閲覧)

写真3 神戸準総壇

写真4 大阪道縁ビル

写真5 神戸準総壇「育元天壇」



【謝辞】

本論文の執筆にあたり、多くの方々にご協力をいただきました。

弥勒寺の皆様、大坂道縁ビルの皆様、神戸準総壇の皆様、何度も足を運んだのにも関わらず親切にご対応いただきありがとうございました。北村讓国父代行をはじめ、天道総天壇のすべての皆様のご協力がなければ、本論文は完成にいたりませんでした。本当にありがとうございました。