関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

タオル商社をめぐる社会史―日繊商工株式会社の事例―

タオル商社をめぐる社会史―日繊商工株式会社の事例―

中村 知希


【要旨】本研究は、タオルの社会史について、船場に本社を置く日繊商工株式会社を事例に取り上げて実地調査を行うことで、商業の街として存在する船場商人の生き様、また日繊商工株式会社の歴史的・社会的背景について明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、以下のとおりである。


1、船場は商業の街として江戸時代より隆盛しており、その中でも繊維商品は特に活気があった。

2、日繊商工株式会社初代社長である俣野平蔵氏は商業高校卒業と同時に京都より上阪、野村作蔵商店に入店し、主である野村作蔵氏に船場商人としての生き方を学んだ。

3、戦時中、多くの従業員が戦地へ出向。その従業員が帰還した際に働く場所が無いと困るという点より、野村作株式会社(旧野村作蔵商店)は昭和17年に日繊商工株式会社の前身である日繊モーラーメリヤス工業有限会社を買収、働く場を設けた。当時は、おしめカバーの製造を行っていた。

4、昭和23年に独立。翌24年に日繊商工株式会社に名を変更した。

5、戦後はバラックで商売をしていた。後に、自社ビルを建設。それに伴い販路も全国に拡大していった。

6、昭和50年代になると商売の形態が大きく変わってくる。それはブランド化である。日繊商工株式会社もコシノヒロコ、MCMと契約し、大きく業績を伸ばしていった。

7、バブル崩壊と共に日繊商工株式会社も大きな打撃を被るが社員一丸となって乗り切り、現在の状況へと繋がる。


【目次】

序章――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――1

 第1節 問題の所在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

 第2節 タオル工業とタオル商業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

 第3節 研究対象としての日繊商工株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・5

第1章 俣野平蔵と野村作蔵商店―――――――――――――――――――――――――――――――8

 第1節 俣野平蔵―出生から野村作蔵商店入店まで―・・・・・・・・・・・・・・9

 第2節 俣野平蔵と野村作蔵商店・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

第2章 日繊モーラーメリヤス工業有限会社――――――――――――――――――――――――――21

 第1節 太平洋戦争と日繊モーラーメリヤス工業有限会社の創立・・・・・・・22

 第2節 終戦直後の日繊モーラーメリヤス工業有限会社・・・・・・・・・・・25

 第3節 日繊商工株式会社の創立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

第3章 高度経済成長期の日繊商工株式会社――――――――――――――――――――――――――31

 第1節 販路拡張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32

 第2節 ブランド化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

第4章 バブル崩壊後の日繊商工株式会社―――――――――――――――――――――――――――42

 第1節 バブル崩壊後の日繊商工株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・43

 第2節 先代・先々代の思いを引き継いで・・・・・・・・・・・・・・・・・46

結語―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――51

会社沿革―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――54

参考文献・URL一覧―――――――――――――――――――――――――――――――――――――57


【本文写真から】























写真1 日繊商工株式会社本社























写真2 箕面物流センター




































写真3 昭和50年前後の作業風景























写真4 インポートブランド























写真5 オリジナルブランド


【謝辞】
本研究をすすめるにあたり、多くの方々からご協力をいただきました。俣野富美雄会長、俣野太一社長、俣野喜計氏、新野泰男氏、片山俊彦氏を始め、日繊商工株式会社の皆様、箕面物流センターの皆様、お忙しいなか本研究にご協力していただき本当にありがとうございました。心より感謝しております。