関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

アイスクリーム行商の民俗誌ー長崎市の「ちりんちりんアイス」をめぐってー

アイスクリーム行商の民俗誌ー長崎市の「ちりんちりんアイス」をめぐってー
大庭 明剛


【要旨】
本論文は、長崎市に根付く行商のひとつであるちりんちりんアイスについて、長崎県長崎市をフィールドに冷菓会社や売り子さんに実地調査を行うことで、創業から現在までの変遷を明らかにしたものである。この研究から明らかになった点は、以下の通りである。


1. 最も創業が早い前田冷菓と外尾冷菓のアイスクリームの原点は、アイスキャンディーであり、双方とも利益の追求をした結果として、辿り着いたものが、ヘラを使ってアイスクリームを盛る屋台販売である。


2. 今回、調査をした冷菓会社である、「前田冷菓」「外尾冷菓」「篠崎冷菓」「木村冷菓」の全てが、創業当時からプレーンの味を守り続けてきた。この中で、現在も販売を続けている冷菓会社は、「前田冷菓」「篠崎冷菓」の2つである。


3. ちりんちりんアイスの盛り方は、「三角盛り」「バラ盛り」「チューリップ盛り」の3種類である。


4. ちりんちりんアイスの販売方法は、昭和の時代には、街中で鐘を鳴らしながら、歩いてちりんちりんアイスを売り回ったり、観光地で売ったりしていたが、現在は、観光地だけで売っている。


5. 屋台で販売するものは、次の通りである。前田冷菓は、ある時期に、ちりんちりんアイスとざぼんやみかんも一緒に売っていた。外尾冷菓では、冬の時期には、売り子さんの収入源を生み出すために、たこ焼きや焼き芋の屋台を行っていた。


6. ちりんちりんアイスが途絶えることなく、現在まで続いている理由は、長崎が観光地であり、観光客や修学旅行生が多いことが関係している。


7. 屋台でちりんちりんアイスを売る売り子さんに共通していることは、お客さんと話すことが大好きであることだ。


【目次】

序章 問題と方法ーーーーー5
 はじめにーーーーー6

第1章 東洋軒ーーーーー7
 第1節 来歴ーーーーー8
 第2節 アイスキャンディーとパンの行商ーーーーー10

第2章 前田冷菓ーーーーー12
 第1節 来歴ーーーーー13
 第2節 販売形態ーーーーー15
 第3節 屋台ーーーーー34
 第4節 売り子ーーーーー36
 第5節 ちりんちりんアイスの1日ーーーーー45

第3章 外尾冷菓ーーーーー48
 第1節 来歴ーーーーー49
 第2節 販売形態ーーーーー52
 第3節 屋台ーーーーー53
 第4節 売り子ーーーーー54

第4章 篠崎冷菓ーーーーー55
 第1節 来歴ーーーーー56
 第2節 販売形態ーーーーー56
 第3節 屋台ーーーーー60
 第4節 売り子ーーーーー62

第5章 木村冷菓ーーーーー67
 第1節 来歴ーーーーー68
 第2節 販売形態ーーーーー69
 第3節 屋台ーーーーー70

結語ーーーーー71  
文献一覧ーーーーー73

謝辞ーーーーー73


【本文写真から】

写真1 前田冷菓の屋台



写真2 篠崎冷菓の屋台



写真3 三角盛り



写真4 バラ盛り



写真5 チューリップ盛り


【謝辞】
 本調査を行うに当たって、多くの方々にご協力をしていただきました。また、お忙しい中、お時間を割いていただいたため、この場をお借りして、心よりお礼を申し上げます。また、特に東洋軒の野田照雄さん、前田冷菓の前田佐和江さん、前田紀仁さん、前田清香さん、末永昭宏さん、松尾アサ子さん、高石勝枝さん、小砂子敏枝さん、尾崎明香さん、外尾冷菓の外尾真弓さん、篠崎冷菓の篠崎一平さん、尾崎マサ子さん、木村冷菓の木村英成さん、その他の関係者の方には、大変お世話になりました。そして、この調査時にご尽力を賜ったことに感謝を申し上げます。ありがとうございました。