関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

巡礼習俗の誕生と観光化 −中国•舟山群島普陀山•洛迦山の事例−

社会学部 倪 晨飛
【要旨】
 本論文では、中国浙江省普陀洛迦山山をフィールドし、観音修道の最初道場としての洛迦山そして普陀山を中心に、舟山全域に至るまで、観音思想の形成、拡大、日常生活との融合をめぐって、調査を行われた、普陀洛迦山の観音信仰について、宗教信仰行事の変遷を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、以下のとおりである。

1. 普陀洛迦山の所在浙江省舟山市は島として、古代の航線上重要な一環であって、そして四周海であるため、最初から漁村として発展してきた舟は漁業も非常に発達し、漁業も産業の重要な一部となっている。昔から現代まで生活、生産上で海との関わりは深いであり、このような背景が南海観音は海の仏様として、こちらの人たちにこんな大きな影響を与え、そして信仰の中心となっていることの主要な前提と基礎になってることを明らかにした。

2. 観音信仰の起源に「観音様が道場を選ぶ」という物語の他に、863年日本からきたお坊さん慧鍔は歴史上にあった実際の人物として普陀山の観音信仰の伝播の中心である。最初の時民家で不肯去観音院の建設そして観音思想を舟山当地身の回りの人に宣伝することなしには、今の仏の国のような光景が見えないと分かった。

3. 普陀山と洛迦山の観音信仰の発展と拡大の中に、洛迦山は観音発足の最初の道場として信者たちそして普陀洛迦山にいるお坊さんたちの間で信仰の中で非常に高い地位に位置づけられている。さらに普陀山と洛迦山を分割した「蓮花洋」という海域も「色」と「波の複雑」が原因で「人生の苦しみの海」として信者たちに認識され、「舟に乗り、人生の苦海の彼岸にある道場で観音様の元へ」、つまり「普陀渡海」と呼ばれる説が信者たちそしてお坊さんの間で存在してると分かった。

4. 中国成立以後歴史上で政治と文化が混乱した「文化大革命」の時期に、当時観音信仰の中心となっている普陀洛迦山も被害をうけた。このような思想の革新から齎した文化活動はこちらに大きな衝撃を与えた一方、新時代を迎えるための宗教の変遷と発展のきっかけともなっていたと分かった。

5. 文化大革命以後、1992年洛迦山の修復により再開。元々信仰の净土として洛迦山には当時被害された寺廟の修復、改造、そして新しい寺、仏塔の建設によって、信者としての一般市民でも参拝、巡礼できるようになった。再び以前よりもっと香火絶えず信仰の源頭になっていた。

6. 今の舟山普陀洛迦山は政府そして当地の徳望の高いお坊さんや住職たちの推進によって、完全に「海天仏国」となり、南海観音信仰となる宗教文化はさらに拡大し、中国だけでなく、韓国、日本などの信者たちの中にも高い地位がある。宗教信仰を現代社会の精神文明建設と融合し、人々の生活を充実した。舟山当地の日常生活文化の一部で、家並みに知られている。「南海観音」という思想文化の影響で、舟山も旅行都市となったと分かった。


【目次】

序章−−−−−−−−−−−−−−−−4

(1)舟山群島−−−−−−−−−−−−−−−−4

(2)調査の背景−−−−−−−−−−−−−−−−4

第1章 普陀山と洛迦山−−−−−−−−−−−−−−−−6

(1)観音信仰の形成−−−−−−−−−−−−−−−−6

(2)観音信仰の確定と拡大−−−−−−−−−−−−−−−−10

第2章 観音の道場ー洛迦山−−−−−−−−−−−−−−−−15

(1)洛迦山の過去と現在−−−−−−−−−−−−−−−−15

(2)文化革命の衝撃を受けたあとの洛迦山−−−−−−−−−−−−−−−−21

第3章 海天仏国の現在−−−−−−−−−−−−−−−−22

(1)宗教行事と旅行結合の例-洛迦山−−−−−−−−−−−−−−−−22

(2)四大道場の一つとしての文化拡張-普陀山−−−−−−−−−−−−−−−−32

結語−−−−−−−−−−−−−−−−37

参考文献と資料−−−−−−−−−−−−−−−−38

謝辞−−−−−−−−−−−−−−−−40


【本文写真から】


図1 中国舟山市(赤線右側は舟山群島である)


図2 禁止捨身燃指碑の写真


図3 不肯去観音院の全貌


図4 普済寺寺院内部大勢にくる信者たち


図5 円覚塔の塔頂と全貌


図6 五百羅漢塔の様子


図7 大悲殿で参拝している信者たち


図8 普陀山の入場券と普陀山から洛迦山までの船の切符


図9 普陀洛伽山全域の絵、右下部分は洛伽山であり、そして普陀山から洛伽山まで行くの子舟も描いてある。


【謝辞】

 本論文の執筆にあたり、多くの方々のご協力をいただいた。お忙しいなかで、舟山の地理環境そして普陀山の宗教概況などに関するお話を聞かせていただいた舟山朱家尖普陀山管理委員会高さん、舟山の宗教と日常生活の共存についてインタビューをうけてさせていただいた舟山当地の市民ゴさんそしてご家族の方々、普陀山現存の数多く寺の現状と歴史を聞かせていただいた普陀山にある最大の寺―普済寺に修行しているお坊さんたち、そして洛迦山で現地考察する時、巡礼の内容、意味に関してインタビューさせていただいた巡礼を行われている信者王さん、鄭さん、楊さんたち、論文の完成にこれらの方々から大変多くの協力をいただいた、人生の経験としてもとても貴重である。今回の調査そして論文の完成にご協力いただいた皆さんに、心より感謝いたします。本当にありがとうございました。