関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

フォークロア研究とは

フォークロア研究とは、人文社会系諸学の学際的状況の中に成立するディシプリンの一つである。その目的とするところは、フォークロア研究をとおして世界の成り立ちについて解明することである。


フォークロア研究は、これまでの民俗学の知的伝統を批判的・発展的に継承したものであり、以下の7つの特性要素の複合をプロトタイプとして構成されるディシプリンである。


フォークロア(何らかのコンテクストを共有する人びと(folk)の間で、生み出され、生きられた、経験(experience)・知識(knowledge)・表現(expression)で、High/Elite Cultureや Mass/Popular Culture などとも関わりながら、概念上、それらとは区別されるもの)を研究対象とする。


②「現在」を厚い歴史の地層(時間性)の上に成立するものと考え、「現在」の事象を「過去」との関係性の検証にもとづいて解析することを方法論の中核に据えている。


③対象把握に際して、社会科学的コンテクスト(社会・政治・経済など社会科学が主として対象化する領域に関わるコンテクスト)に加え、人文学的コンテクスト(言語・文学・美学・歴史など人文学が主として対象化する領域に関わるコンテクスト)を重視する。


④人と「もの」(造形物・物質的事象)との関わりを重視する。


フォークロアを生み出し、生きる人びと(folk)や彼らが暮らすフィールドと、研究者・学界との間に、深い相互性(reciprocality)がある。


⑥いわゆる「輸入学問」ではない。生成母体となった言語圏において内発的に発生した。


⑦各言語圏で内発的に発生したフォークロア研究は、地球規模でのフォークロア研究間の相互照合・協業の進捗により、単一言語圏に限定されない知を生みだすようになっている。



なお、こうしたフォークロア研究は、フランス語圏におけるEthnologie、ドイツ語圏におけるEthnologie, Empirische Kulturwissenschaft、英語圏におけるFolkloristicsなどに相当するとともに、人類学(Anthropologies)の一形態として位置付けることも可能である。