関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

振り売りとガンガン部隊―輪島と小樽の行商人たち―

振り売りとガンガン部隊―輪島と小樽の行商人たち―

大西佐和


【要旨】
 本研究は、石川県輪島市と北海道小樽市をフィールドに、現代に生きる行商人について実態調査を行ったものである。輪島市では、振り売りと呼ばれる行商人に密着し、小樽市ではガンガン部隊という行商人に密着し、彼女たちの行商の様子を観察した。本論で明らかになったのは次の通りである。

1.石川県輪島市には振り売りと呼ばれる行商人が存在し、彼女達は組合に属している。早朝、輪島港で水揚げされた鮮魚を自らでセリで買い付け、それを下ごしらえしてリヤカーにのせて行商を行っている。

2.最近ではリヤカーで行商を行う振り売りだけでなく、軽トラックを利用する振り売りも出てくるようになった。しかしガソリン代がかかるなど、軽トラックは考えているよりも便利ではないようである。

3.振り売りには得意先と呼ばれる客がおり、リヤカーを停めて行商を行うと、近所の方々が集まり、コミュニケーションの場になっている。そこでは、朝のニュースの話から今晩のおかずに至るまで、世間話が行われる。

4.北海道小樽市には、ガンガン部隊の生き残りが存在し、現在でも1人で部隊を続けていること。吉田のおばあちゃんと言われ、高島地区に住んでいる。

5.昔のガンガン部隊とはスタイルを少しずつ変えている。例えば、服装、持ち物、買い出しに行く市場、歩く距離など。しかし、お客様の元に新鮮な品物を届けようとする努力は変わらない。

6.吉田のおばあちゃんが果たす役割と、ガンガン部隊にこだわる理由をライフヒストリーと共に語ってくれた。吉田のおばあちゃんは、人の役に立ちたいという思いから行商を続けてきたと語ってくれた。そして今後もガンガン部隊を続けていきたいと元気よく話してくれた。


【目次】
序章 問題の所在 1
 第1節 問題の所在 2
 第2節 行商人とは 2
 (1)行商人とは 3
 (2)歴史 3
第1章 輪島の振り売り 6
 第1節 輪島市と振り売り 7
 (1)輪島市 7
 (2)朝市 8
 (3)振り売り 9
 第2節 板谷さん 10
 (1)「なわばり」 11
 (2)行商のスタイルと思い 12
 (3)得意先からの声 14
 第3節 安藤さん 14
 (1)「なわばり」 14
 (2)行商のスタイルと思い 15
第2章 小樽のガンガン部隊 27
 第1節 小樽市とガンガン部隊 28
 (1)小樽市 28
 (2)ガンガン部隊 28
 第2節 吉田月江さん 30
 (1)移動範囲 30
 (2)行商のスタイルと思い 32
 (3)得意先からの声 33
結語  44
  

文献一覧 46


【本文写真から】


セリ落とした魚を下ごしらえする様子


得意先に魚を売る様子


昔のガンガン部隊の様子


市場で買付を行う吉田のおばあちゃん


得意先に届けにいく様子

【謝辞】
 今回の研究では、輪島市の振り売りである板谷さんと安藤さん、小樽市のガンガン部隊である吉田さんには、お仕事でお忙しいにもかかわらず、密着させていただきました。質問にも丁寧に答えていただき、何時間も同行させていただきました。論文を書くに至り、お力添えをいただいたことに深く感謝し、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。