大阪港における水上生活者
渕 修平
【要旨】
本研究では、大阪港と大阪市港区の公営住宅団地付近をフィールドに、艀船員の労働と生活の跡を追ったものである。とくに、A海運のB氏とC氏の話を中心に大阪港で生きてきた艀船員のリアルな声を記述した。各章の要旨はつぎのとおりである。
第1章 艀船員の労働は、長時間連続労働であり、また常に危険と隣り合わせのものであった。船員の家族は、船員を生活の中や手伝える仕事でささえていた。また、船員とその家族は、西日本、とりわけ瀬戸内海沿岸の漁民出身者や船乗り経験者が多数を占めていた。
第2章 艀の船内居住は、狭い室内で行なわれ、常に危険と隣り合わせのものだった。水上を移動する船内居住では、子供は学校に通うことができなかった。そのため、「海の子の家」という艀船員の子女のための寮ができた。そこは艀船員の子供たちであふれかえったが、艀の衰退と船員の陸上がりとともに、一般の児童養護施設に姿を変えた。
第3章 陸上がりをした船員と家族はD町の公営団地等を住まいとした。そこには人があふれ、数多くの銭湯も毎日人でいっぱいだった。ただし、その後の艀の衰退によって、船員たちの多くは故郷へ帰って行った。
【目次】
序章 1
第1節 問題の所存 2
第2節 艀とはなにか 3
第3節 フィールドとしての大阪港 4
第1章 艀の仕事7
第1節 大阪港の港湾運送事業と艀 8
第2節 船員の出身地 20
第2章 艀の生活23
第1節 船内生活 24
第2節 海の子の家 32
第3章 艀の陸上がり37
第1節 公営住宅と銭湯 38
第2節 陸上がり後の生き方 41
結語 44
参考文献 45