関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

線香の民俗誌―人々の生業とくらし 淡路市江井の事例―

線香の民俗誌―人々の生業とくらし 淡路市江井の事例―

前田 瑞穂

【要旨】

本研究は、淡路市江井をフォールドに、国内生産シェア7割を占める線香業にまつわる、歴史やとりまく人々のくらしについて、文献やインタビューから明らかにしたものである。

本研究で明らかになった点は、次のとおりである。

1.淡路市江井は、元は海運業で栄えたまちであった。
2.船乗りたちはこの地域特有の冬の季節風に悩まされ、小間物問屋を営む田中辰蔵が大阪堺から、冬枯れ対策として線香業を導入した。
3.海上交通の便利さ、淡路市江井の気候条件の良さも後押しし、線香業は栄えていった。そして生産量1位であった大阪堺が、空襲によって被害を大きく受けたことをきっかけに、淡路市江井が生産量1位になった。
4.現在は、線香のまちとして生き残るために、一丸となって積極的に淡路ブランドの線香をアピールしている。例として「あわじ島の香司」が挙げられる。
5.線香業を通じた、人々のドラマや生き様がある。

【目次】

序章 江井の概況と大阪堺の線香業 ―――――――――――――――――― 4
はじめに........4

第1節淡路市江井の概況........4
第2節大阪堺の線香業 ........5
(1)線香業の歴史
(2)現在

第1章 江井の線香業の起こり ――――――――――――――――――――10
第1節海運業で栄えた江井........10
(1)江井浦
(2)住田家
第2節線香業の起こりと田中辰蔵..........15
(1)線香業の起こり
(2)田中辰蔵

第2章 江井の線香業の歩み ―――――――――――――――――――――24
第1節線香生産量日本一へ.......24
第2節現在の取組み ..........34
 (1)江井の線香業の課題
 (2)現在の取組み

第3章 線香業をめぐる人々――――――――――――――――――――――41
第1節株式会社梅薫堂 吉井康人さん..........41
第2節日本線香有限会社 金登武司さん ........43
第3節株式会社松竹堂香舗 田中 勝さん..........44


第4章 手内職の女性たち ――――――――――――――――――――――46
第1節大平とし枝さん .........46
第2節新居聖美さん  .........47
第3節金登扶佐子さん .........48

結語 ――――――――――――――――――――――――――――――――50

文献一覧 ――――――――――――――――――――――――――――――52


【本文写真から】



(写真1)江井港と線香会社



(写真2)線香製造の様子 これは旧式の製造方法



(写真3)手内職の女性たち 掘りごたつ式になっている。


【謝辞】

本研究は、たくさんの方々のご協力をいただき、成立した。
お話をきかせていただき、とてもよくしてくださった吉井康人さん、金登武司さん、田中 勝さん、大平とし枝さん、新居聖美さん、金登扶佐子さん、濱岡きみ子さん、二宮慶子さん、心より感謝申し上げる。
その他、ご協力いただいた全ての方々に、深くお礼申し上げる。