「木型」でつながる寺社と和菓子屋――京都市の事例
森澤 仁美
【要旨】
本研究は、京都市をフィールドに実地調査を行うことで、「木型」を軸とした寺社と和菓子屋の関係を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、次のとおりである。
1.寺社で使われる落雁という和菓子は、御用達である和菓子屋に毎回注文される。
2.落雁には寺社の紋がかたどられており、これを作るためには寺社の紋が彫られた「木型」が必要である。
3.寺社の「木型」は、御用達である和菓子屋にずっと預けられている。
4.京都の和菓子屋は、のれん分けによって店舗を増やしてきた。
5.「木型」とのれん分けの関係は、新調、譲渡、買い取りの3つに分けることができる。
【目次】
序章――――――――――――――――――――――1
第1節 先行研究と問題の所在・・・・2
第2節 京都と和菓子・・・・・・・・4
第1章 御用達と「木型」――――――――――――9
第1節 寺社と御用達・・・・・・・・10
第2節 和菓子の御用達・・・・・・・14
第3節 「木型」・・・・・・・・・・17
第4節 御用達の継続と中止・・・・・25
第2章 「木型」とのれん分け――――――――――30
第1節 新調・・・・・・・・・・・・31
第2節 譲渡・・・・・・・・・・・・36
第3節 買い取り・・・・・・・・・・38
結語――――――――――――――――――――――40
参考文献・URL一覧―――――――――――――――43
【本文写真から】
亀屋良長の店内に飾られている東本願寺御用達の看板。
末富が所持している(左から)東寺、東本願寺、妙心寺、知恩院の「木型」。
亀屋良長が所持している(左から)東本願寺、法輪寺の「木型」。
【謝辞】
現地調査では数々の和菓子屋のご協力があったからこそ、成し遂げることができた。時間を割いて下さり、丁寧にお話をして頂いた亀末廣、末富、宝泉堂、亀屋良長、亀屋清永、柏屋光貞、亀廣永、亀屋重久、亀屋良永、亀屋友永、笹屋伊織、笹屋修康、俵屋吉富の各和菓子屋、そして堀九来堂に謝意を表したい。また、電話にも関わらず丁寧に対応して頂いた東本願寺、西本願寺、妙心寺、知恩院の皆様にもお礼申し上げる。