関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

「熱心な人たち」とお大師講―佐賀県旧北波多村における講の存続をめぐって―

「熱心な人たち」とお大師講―北波多村における講の存続をめぐって−
井手正広


【要旨】
本研究では、お大師講という民俗信仰の場について、佐賀県旧北波多村で実地調査を行い、信仰に対して「熱心な人たち」が少なくなってきている現在における、
講の変化やさまざまな取り組みを明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は次のとおりである。

1、どの集落においても、昔と比べて「熱心な人たち」が少なくなっている。またはすでにいなくなっている集落もある。

2、現在もお大師講が残っている集落の特徴としては、農業人口が多く集落内のつながりが比較的強いことが挙げられる。

3、「熱心な人たち」が存在している集落においては、お大師講における「熱心な人たち」の態度やあり方によって、お大師講が健全であるかどうかが決まってくる。

4、「熱心な人たち」がいなくなった集落のお大師講は、地域の「集い」の場へと変化するか、または廃止されるかのどちらかである。

5、「熱心な人たち」がいなくなった集落において、お大師講のほかにも「集い」の場が存在する場合、お大師講は廃止されることが多い。

6、どの集落のお大師講も、存続のためにさまざまな取り組みがなされているが、その取リ組みや変化の度合いは、集落によってそれぞれ異なっている。


【目次】
序章―――――――――――1 
 第1節 問題の所在・・・・・・・・・・2
 第2節 佐賀県旧北波多村の概況・・・・・・・・・・3
 第3節 旧北波多村とお大師講・・・・・・・・・・6


第1章 「熱心な人たち」が存在する集落――――――――――――11 
 第1節 お大師講の隆盛と「熱心な人たち」・・・・・・12
 第2節 「熱心な人たち」と参加者の本音・・・・・・15


第2章 「熱心な人たち」がいなくなった集落――――――――――――20 
 第1節 「マチ」のお大師講・・・・・・・・・・21
 第2節 「ババ会」、「十日会」とお大師講・・・・・・・・・・25
  (1)D集落の「ババ会」……25
  (2)E集落の「十日会」……27
 第3節 「集い」の場としてのお大師講・・・・・・・・・・29
  (1)F集落……29
  (2)G集落……32
  (3)H集落……34
 第4節 「伝統」志向のお大師講・・・・・・・・・・37


結語――――――――――――41

あとがき――――――――――――45

文献一覧――――――――――――46


【本文写真から】

写真1:弘法大師を奉っている祠


写真2:お大師講の様子


写真3:座談会の様子


写真4:参加者の家に存在する弘法大師の石像


【謝辞】
真子幸夫先生をはじめ、今回の調査に協力していただいた北波多の方々に心から感謝しています。
本当にありがとうございました。