関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

墓に立つ市―大阪・河内地域の「墓市」について―

墓に立つ市―大阪・河内地域の「墓市」について―
中川保代


【要旨】  
 本研究は、東大阪市に所在する岩田墓地、加納川田墓地、高倉墓地、長瀬墓地の4つの墓地をフィールドに実地調査を行うことで、墓市を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、つぎのとおりである。
1.墓市は河内地域に所在する岩田墓地を中心に毎年8月の盆の時期に行われる。
2.墓市の始まりは墓地で異なるが、岩田墓地の場合、大阪の商売人が持ってきた衣服や農具と、農民が作った農作物の物々交換が原形だと考えられている。
3.墓市当日は朝に墓地の掃除等行い、夕方から夜にかけて家族や親戚などで墓を参拝し、墓地周辺の露店を楽しむことが一般的である。

4.墓と市は、東京で行われている草市、河内七墓参りや大坂七墓の跡地が盛り場(千日前や梅田)になっていることなど様々な形で古くから関係があった。
5.墓市の背景には、河内地域の「行基信仰」が存在すると考えられる。
6.墓市は久しぶりに再会する知人や、墓地管理費の集金で地元民と話す「コミュニケーションの場」として地域活性化の1つのシンボルとなっている。


【目次】
序章――――――――――――――――――1 
 第1節 問題の所在・・・・・・・・・2
 第2節 本論の構成・・・・・・・・・2
第1章 墓市の事例――――――――――4
 第1節 岩田墓地・・・・・・・・・・5
 第2節 加納川田墓地・・・・・・・・40
 第3節 高倉墓地・・・・・・・・・・55
 第4節 長瀬墓地・・・・・・・・・・63
第2章 墓市の背景――――――――――77
 第1節 墓と市・・・・・・・・・・・78
 第2節 七墓参り・・・・・・・・・・81
  (1)河内七墓と七墓参り・・・・・81
  (2)大坂七墓と七墓参り・・・・・112
 第3節 行基信仰・・・・・・・・・・139
第3章 墓市の現在――――――――――143
結語―――――――――――――――――146
文献一覧―――――――――――――――148


【本文写真から】

写真1 高倉墓地内から見た露店の様子

写真2 午後6時30分ごろの高倉墓地の様子

写真3 午後7時ごろの高倉墓地の様子

写真4 午後8時頃岩田墓地内から見た墓地入口

写真5 午後8時頃の岩田墓市
夜になると露店の灯りが目立ち、人も増え続けた。通路が普段よりも狭い上に人が多いため歩くこ
とも困難になる程であった。


【謝辞】
 本研究には多くの方々にご協力いただいた。特に、岩田北部自治会会長中村嘉孝氏、義之清規氏には資料を提供していただき、話者を紹介していただいた。また当日もお忙しい中、一日中調査に協力していただき本当にお世話になった。また大阪石材工業株式会社の内海孝雄氏、花原薫氏、手塚けい子氏にも沢山のお話しを聞かせていただいた。ご協力していただいた全ての方に心から感謝申し上げる。