関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

はしけの社会史―神戸港の事例―

土井はしけの社会史―神戸港の事例―
土井 麻奈未

【要旨】
本研究は、神戸港のはしけについて、神戸市で実地調査を行うことで、はしけ労働者の水上生活の実態を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、次のとおりである。

1.神戸港は開港以来、はしけ業が栄え、水上生活者が存在していた。
2.水上生活では、独自の文化や慣習が存在し、彼らの出身は大半が瀬戸内海と九州であった。
3.彼らの存在により、神戸の港は繁栄したといっても過言ではなく、港の、千を超えるはしけの様子は当たり前の風景であった。
4.近代化の影響により、はしけ業は衰退し、水上生活者は陸に上がり散り散りになった。
5.コンテナが主流の現在、はしけの必要性は大きく減っているが、まったく姿を消したわけではない。部分的にはしけが必要とされており、その場合は、姿を変えつつもほぼ従来と同じように荷役の仕事をして、港を支えている。

【目次】
はじめに―――――――――――――――――――――――――1

第1章 「はしけ」とは――――――――――――――――――2
 第1節 はしけの歴史・・・・・・・・・・・・・・・・2
 第2節 神戸港の歴史・・・・・・・・・・・・・・・・4

第2章 神戸のはしけ業――――――――――――――――――6
 第1節 はしけで働く人々・・・・・・・・・・・・・・6
 第2節 はしけでの荷役・・・・・・・・・・・・・・・9
   (1) 仕事の内容
   (2) 荷の中身

第3章 水上で暮らす人々―――――――――――――――――17
 第1節 木船時代の水上生活・・・・・・・・・・・・17
   (1) 船の構造
   (2) 水上での生活
   (3) 苦難と災難
 第2節 くらしのなかで・・・・・・・・・・・・・・27
   (1) 水上児童寮
   (2) 沖売り
   (3) ナカマ
   (4) ニゴヤ

第4章 陸へ上がる人々――――――――――――――――――32
 第1節 神戸港の近代化・・・・・・・・・・・・・・32
   (1) コンテナの登場
   (2) 国産波止場共同住宅
 第2節 はしけ業に落ちる影・・・・・・・・・・・・34
 第3節 現在の姿・・・・・・・・・・・・・・・・・35

結語―――――――――――――――――――――――――――36
図・写真―――――――――――――――――――――――――38
文献一覧―――――――――――――――――――――――――57


【本文写真から】






















写真1 現在のはしけ






















写真2 船艙(荷の間のこと)の様子






















写真3 部屋のような船内の様子(一例)






















図1 はしけ荷役時の待機図






















図2 はしけ荷役時の移動図(一例)





















図3 袋物の荷役の様子






















図4 木製はしけの簡略図


【謝辞】
本研究には多くの方にご協力いただき、特に、大川一之氏、角本稔氏、行政雅夫氏には大変お世話になった。
自宅へ招いていただいたり、車や船に乗せて連れて回っていただいたりと、本当に温かく迎えていただいた。
お世話になった方々に、心から感謝申し上げる。