関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

河原町の生業とくらし―兵庫県豊岡市円山川河岸の事例―

河原町の生業とくらし―兵庫県豊岡市円山川河岸の事例―

上田拓弥

【要旨】

 本研究は河原町である兵庫県豊岡市円山川河岸をフィールドに実地調査を行うことで、豊岡の発展と円山川の関連性、およびその歴史・現状について明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、以下の通りである。

1.内外から多様な人々が集まり、交流・交換する都市的なる場として、河原町があげられ、河原町は都市のできる場とされている。

2.豊岡城下町は円山川沿いに南北に開かれ、「千石船の集会せし湊」として栄えていた。

3.豊岡の流通経済に円山川舟運は欠かせないものであり、紛争も続発するほどであった。また、湯島(城崎温泉)への旅の道にも円山川から舟が使われていた。

4.豊岡盆地と円山川の特殊な地勢的条件は「柳行李」を生み出し、後に地場産業である「豊岡かばん」へと発展を遂げた。しかしながら一方で、円山川流域は、下流の豊岡盆地に向けて洪水が集中しやすい過酷な地勢的条件でもあり、住民の生活や生命をも脅かすものであった。

5.現在の円山川は、舟運や渡船は存在しない。また近代以降から現在まで、治水対策として大規模な河川改修が実施される度に堤防がかさ上げされるので、旧い景観をとどめていない。

6.また豊岡かばんも、現在では、中国を中心とした安価な輸入品が日本市場に出回っており、輸入品を取り扱わざるを得ない状況となっている。今後は、機能性やファッション性、または時代の要求に合ったエコロジーなど、より多様化し、高級化することが課題としてあげられている。

【目次】

はじめに―――――――――――――――――――――――――――1
第1章 河原町とは ――――――――――――――――――――――2
 第1節 都市とは………………………………………………2
 第2節 公界の河原……………………………………………4
 第3節 都市のできる場−河原町−…………………………6
第2章 円山川河原町――――――――――――――――――――13
 第1節 円山川と豊岡城下町…………………………………13
 第2節 杞柳産業のおこり……………………………………20
第3章 河原町の近代―――――――――――――――――――――25
 第1節 円山川の治水…………………………………………25
 第2節 杞柳産業からかばん産業へ…………………………27
おわりに―――――――――――――――――――――――――――38
文献一覧―――――――――――――――――――――――――――75

【本文写真から】


写真1 円山川

写真2 かばんのまち―豊岡―カバンストリート

写真3 柳行李

【謝辞】
 本論文を完成させる過程にあたり、豊岡市宵田町「植村美千男のかばん工房」の職人植村美千男さんには大変お世話になり、多くのことをご教示賜りました。この場を借りて御礼を申し上げます。