関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

「近江商人」の虚像と実像

近江商人」の虚像と実像

外村 美里

【要旨】
 本研究は、「近江商人」の本来の姿と、現代における人々の認識について、滋賀県五個荘金堂町をフィールドに実地調査を行い、既存の諸説を踏まえた上で「近江商人」の実像と人々の認識‐虚像‐を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、次のとおりである。

1.近江において多数の商人が輩出された背景には、歴史的要因と地理的要因が深く関わっている。
2.琵琶湖周辺に形成された多数の街道および宿場町が、近江における商人発祥をさらに促し、活発なものにした。
3.「近江商人」について様々な解釈がなされ、本来の姿とは異なった「近江商人像」が出来上がった。
4.現在「近江商人」の商法や経営手法を見直す動きが盛んになり、後世の者による解釈・認識がより一般化しつつある。

【目次】

序 章 ――――――――――――――――――――――――――――― 1
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第1章 近江の商人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第1節 近江と行商・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第2節 5大商人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

第2章 五個荘外村与左衛門家 ―――――――――――――――――――20
第1節 五個荘の商人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
第2節 外村与左衛門家・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29                   
第3節 くらしと精神 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
第4節 家訓と制度  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38

第3章 ブランドとしての近江商人―――――――――――――――――――42
第1節 「近江商人」像・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
第2節 和菓子の「たねや」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47

まとめ―――――――――――――――――――――――――――――――50
あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

文献一覧――――――――――――――――――――――――――――――53

【本文写真から】


















(写真1)五個荘金堂中心地。白壁の土蔵、船板の壁が残る。


















(写真2)復元される「近江商人」の姿。(外村宇左衛門邸蔵)


















(写真3)造語「三方よし」のもととなった中村治兵衛家の「宋次郎幼主書置」一部。(外村宇兵衛家蔵)
























(写真4)展示された現代訳には「三方よし」のもとに当たる部分に赤線が引かれている。(外村宇兵衛家蔵)























(写真5)「三方」の意味は「売り手」「買い手」「世間」の解釈からきている。(外村宇兵衛家蔵)


















(写真6)「三方よし」は「近江商人」の家訓という認識はどこからくるのか。(外村宇兵衛家蔵)


【謝辞】

 今回の論文の執筆にあたりご協力頂いた中江準五郎邸の福本様、外村宇兵衛邸、外村繁邸、近江商人博物館学芸員の皆様には心から謝して御礼申し上げます。