関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

大阪菓業者と西宇和郡

大阪菓業者と西宇和郡
吉田依里香
【要旨】
本研究は、愛媛県西宇和郡出身者の大阪での菓業者の同郷団体形成について、大阪市生野区藤井寺市、八尾市をフィールドに実地調査を行い、西宇和郡出身者で現在も菓業を続けている方々からのインタビューによって、その同郷団体のルーツや特徴を明らかにしたものである。同郷団体とは、地方出身者が都市で形成した同業者集団のことである。
本研究で明らかになった点は、つぎのとおりである。
1.西宇和郡出身の菓業者の先駆者は、明治後期に大阪で「はちみつボーロ」を始めた山本政太郎さんである。
2.山本政太郎さんが創業した山本政商店の成功に端を発し、次々と同郷である西宇和郡塩成、もしくはその周辺地域(西宇和郡内)から大阪への出郷者が続出した。
3.大阪に移住してきた西宇和郡出身者は西成区の花園町から橘通の一帯に集中して住み、「第2のムラ」なる「塩成村」を形成した。
4.現在は9名だが、ほぼ西宇和郡出身者で構成される「新生会」という同郷団体がある。
5.新生会の主な活動は毎月の食事会と新・忘年会である。

【目次】
序 章──────────────────────────────1
第1節 都市移住と生業……………………………………………………1
第2節 大阪と菓業者………………………………………………………9


第1章 塩成とボーロ・焼菓子──────────────────25
第1節 愛媛県西宇和郡三机村塩成……………………………………25
第2節 塩成出身者のルーツ……………………………………………29
第3節 西宇和郡出身者とボーロ・焼菓子……………………………31


第2章 西宇和郡と大阪菓業者──────────────────44
第1節 光製菓……………………………………………………………44
第2節 緒方製菓…………………………………………………………46
第3節 フルタ製菓………………………………………………………47
第4節 ケンテル…………………………………………………………49
第5節 大阪菓業四国会と新生会………………………………………50


結 語─────────────────────────────51


付論 闇市と菓業者───────────────────────52
(1)菓子と統制経済 52
(2)菓子と闇市 53


第1章 闇市と菓業者──────────────────────57
第1節 長崎堂……………………………………………………………57
第2節 三清堂製菓………………………………………………………59
第3節 駿河屋……………………………………………………………61


第2章 丸八商店────────────────────────64


文献一覧────────────────────────────67

【本文写真から】


写真1 西成区花園町・橘通周辺の菓子屋分布図


写真2 山本政商店


写真3 緒方製菓


写真4 フルタ製菓

【謝辞】
本論文を卒業論文として形にすることができたのは、菓業者にアポをとるのを手伝ってくださった近畿菓子卸商業組合連合会事務局の森川惟男さん、週刊製菓時報株式会社の東本浩治さん、文献収集を手伝ってくださった大阪府洋菓子工業協同組合の石川健二さん、お忙しい中インタビューに応じてくださった株式会社富士屋本店の谷上隆勇さん、稲葉商店の厚地房子さん、株式会社長崎堂の荒木一郎さん、春日堂本舗の川口英美子さん、小松商店街の食堂の池上よしえさん、全国菓子工業組合連合会理事長の岡本楢雄さん、三清堂製菓株式会社の寺下泰弘さん、光製菓の阿部福光さん、有限会社緒方製菓の緒方立男さん、フルタ製菓株式会社の古田鶴彦さん、株式会社丸八商店の村上治雄さん、ケンテルの山下謙二郎さんのおかげです。本当にありがとうございました。