坂本莉子
【要旨】本研究は、京都府八幡市に存在する泥松稲荷神社をフィールドに実地調査を行うことで、泥松稲荷神社と霊能者の関係を明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は、つぎのとおりである。
1.泥松稲荷神社は、尼崎出身の「庵主さん」という人物が、人間に対してよくいたずらをすることで知られている狸の「どろ松」の看病を行い、ともに修行を行ったことで、どろ松の死後は神がかりによって占いが当たるようになり、信仰を集めた神社である。
2.かつては尼崎や大阪出身の信者が多く、祭壇の幕や、どろ松稲荷社ののぼり、提灯の多くは尼崎や大阪から寄贈されている。その後、阪神淡路大震災の影響で尼崎からの信者が途絶え、現在は尼崎や大阪からの参拝者はほとんど存在しない。
3.どろ松には子供である狸の久松が存在し、久松稲荷として泥松稲荷神社のなかでともに祀られている。久松を守護神として信仰していた守屋たけという女性は大阪市城東区蒲生2丁目に蒲生教会を持つ、霊力を持った女性であった。
4.現在、久松稲荷を管理している井上智俊という女性もどろ松の降霊を行うことが出来る。どろ松の霊が入った際には単語を呟くことがあるが、自身ではその内容を覚えていない。
5.泥松稲荷神社には、庵主さん、おタカさん、守屋たけ、井上智俊という4名の霊能者が存在し、どろ松の降霊や占い、予言を行うことが出来た。
【目次】
序章
第1節 問題の所在
第1章 泥松稲荷
第1節 庵主さんと泥松稲荷
第2節 おタカさん
第3節 現在の泥松稲荷
第2章 久松稲荷と蒲生教会
第1節 久松稲荷と守屋たけ
第2節 井上智俊
(1)父親の病気
(2)泥松との出会い
(3)修行を行うきっかけ
(4)霊の入る感覚
(5)泥松稲荷の初午祭
結語
文献一覧
謝辞
【本文写真から】
【謝辞】本論文の執筆にあたり多くの方々にご協力いただきました。泥松稲荷神社を訪れるたびにお話を聞かせていただき、写真やのぼりなどの資料集めにご協力いただいたIさん、長時間にわたり貴重なお話を聞かせていただいた井上智俊さんのご協力がなければ本論文は完成に至りませんでした。今回の調査にご協力いただいたすべての方に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。