関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

台湾フィールドワークトリップ

 10月5日〜10日の5泊6日間、台湾をフィールドにゼミ合宿を行いました。


 台湾は新興経済国の一つで、特にIT産業などの分野で飛躍的な成長を遂げています。
政府の機能が集中する台北は、国内企業だけでなく、世界の投資が集中し、世界でも有数の大都市になりつつあります。

 台湾は古くから原住民が住んでいたことでも知られています。大航海時代にオランダやスペインなど列強からの支配を受け、その後も鄭成功、日本、中華民国と外来政権によって常に支配されてきました。国際的には今も“独立した国家”として受諾されてはおらず、中華民国が正式な名前となっています。「台湾はすでに機能的にみても独立した国家なので承認されるべき」や「台湾は中華民国という外来政権に支配された事はあっても、中国に支配された歴史はないのであり、中国が権限を行使するのはおかしい」などとする独立推進派と「台湾は今も昔も漢文化圏であり、大陸の影響かにおかれなけらばならず、独立などあってはならない」などの反対派意見があり、その独立をめぐっては様々な議論が展開されています。

 定義的にはいつの時代に中国大陸のどの地域から渡ってきたかによって分類されてはいますが、歴史的に複雑な支配構造におかれてきたことからも想像されるように、台湾には様々な人々が住んでおり、そのアイデンティティも世代を追うごとにますます曖昧なものになってきています。


 さて、今回私たちは中でも日本統治時代の影響が色濃く残るとされる台湾東部の原住民に焦点を当ててフィールドワークを進めました。元々部族ごとのコミュニケーションの手段を“言語”として持っていなかった原住民は、日本統治時代の影響で、日本語を共通語として使ったと言われています。今でも、年配の方の間では所々日本語が使われる一方で、若い世代は中国語の教育を受けている点からも複雑な社会構造を読み取ることができます。

台湾でいわゆるマイノリティに属し、歴史的・社会的に大きな影響を受けてきながら、独特の生活文化を築いてきた原住民からは、その生活の知恵や考え方を学ぶだけではなく、それらを通して日本をまた新たな視点で捉える事が出来ると期待を持って臨んだフィールドワークでした。





巡検の報告を以下の構成で行います。
ぜひご覧ください。


Ⅰ.活動の記録

 1−10月5日
 2−10月6日
 3−10月7日
 4−10月8日
 5−10月9日

Ⅱ.タイヤル族の村

Ⅲ.タイヤル族で出会った人々

Ⅳ.サキザヤ族と火祭り

Ⅴ.民族とは

Ⅵ.台湾フィールドワークを終えて





※記事の中で台湾に元々住んでいる民族に対して“原住民”を使っています。日本ではその言い方が差別的であるという意見から“先住民”が使われますが、台湾では逆に“原住民”の方が差別的な意味合いがないそうです。国際的には“indigenous people(原住民)”と“ aboriginal people(先住民)”どちらも使用されているようですが、今回は台湾を尊重して“原住民”を使っています。