関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

美章園からみる近代大阪‐郊外住宅地と高架下バラック街が存在するまち‐

美章園からみる近代大阪‐郊外住宅地と高架下バラック街が存在するまち‐
木戸 彩香


【要旨】
 本研究は現代にみる近代大阪について大阪市阿倍野区美章園をフィールドに実地調査を行うことで、美章園にみる近代大阪を探り、美章園という街の構造を明らかにしたものである。明らかになった点は以下の通りである。

1.美章園は戦前、郊外住宅地としてつくられた街であった。
2.美章園という名の由来は金沢藩士である山岡美章という人物から来ており、美章園を開拓したのは山岡順太郎という人物である。
3.現在にも見ることができる高架下バラック街は、終戦後から存在していた。
4.高架下バラック街は商店として存在していたが、実際は闇取引が行われていた。
5.高架下バラック街は、現在は商店街として下町風情を残し人々に親しまれている。
6.高架下の物件は商店、住宅としてJRが貸出している。
7.住宅地としての美章園は現在、戦前から住んでいる人、戦後から住んでいる人、近年住み始めた人の3種類に分かれ、住宅も様々なものが混在している。
8.現代の美章園は、高架下バラック街のような下町文化の要素と郊外住宅地である要素が混在した街である。
 

【目次】


 はじめにーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  1

序章 大阪の街の構造 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  2


第1章 美章園という街の成り立ち ーーーーーーーーーーーーーーー 6

第1節 戦前の郊外住宅地・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
 第2節 山岡順太郎と美章土地株式会社・・・・・・・・・・・・・ 8
 第3節 戦前の美章園・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

第2章 空襲被爆地としての美章園ーーーーーーーーーーーーーーーー 23

 第1節 大阪空襲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
 第2節 高架下バラック街・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
  (1)ガード下闇市 27
  (2)谷口夫妻のライフヒストリー 29

第3章 現代の美章園 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 35

 第1節 高架下商店街 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
 第2節 田辺寄席 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
 第3節 豊下製菓株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
 第4節 美章園(郊外住宅地)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

結語ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 61

文献一覧ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 63


【本文写真から】



(写真1)高架下バラック街。




 
(写真2)高架下にある住宅。





(写真3)美章園住宅地内の現況。


【謝辞】本研究において、フィールド調査の際には、多くの話者にご協力いただいた。とくに戦中、終戦直後についての貴重なお話を聞かせてくださった谷口禮一氏、谷口節代氏には深くお礼を申し上げる。その他、協力して戴いたすべての方に心より感謝申し上げる。