関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

カワビタリモチ再考―分類と考察―

岡林 優

 

【要旨】

本研究は旧暦12月1日行われていた、カワビタリモチという地域ごとによってかなり特色の異なる水難除けの行事の事例と、その日と同日に行われていた他の水難除けの行事の事例について、「供物型」「川浸し型」「陸上型」の新たな体系に分類し、まとめたものである。本研究で明らかになった点は次のとおりである。

 

1.「供物型」のカワビタリモチは川で行事を行うため、同じく川で行事を行うミミフタギや溺死者の供養などと結びつき、独特な事例となる場合がある。

 

2.「川浸し型」のカワビタリモチは妊娠などにも効果があるとされる場合があり、陸上型のカワビタリモチと比較しても効果のバリエーションに富んでいる。

 

3.「陸上型」のカワビタリモチは水難除け以外の効果のバリエーションがみられなかった。

 

4.「川渡り」という12月1日に川を渡ることで水難除けを願う行事においても、川を渡ることで家が栄えるといった、「川浸し型」のカワビタリモチと同様に水難除けに留まらない効果の事例がみられた。

 

5.川から離れた場所で行われた事例よりも、川の付近や川に入って行われた事例からの方が、他の川の付近で行う行事と内容的に結びついている事例がみられたり、水難除け以外にも効果があるとする事例がみられた。

 

【目次】

序章

 

第1章 供物型

第1節 供物型とは

第2節 事例

 

第2章 川浸し型

第1節 川浸し型とは

第2節 事例

 

第3章 陸上型

第1節 陸上型とは

第2節 事例

 

結語

 

文献一覧

 

【本文写真から】

写真 川岸に餅を供えている様子
*出典:宇都宮市歴史文化資源活用 推進協議会,
(年中行事 ~「カピタリ」~ | 宇都宮の歴史と文化財 (utsunomiya-8story.jp)
より転載)