関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

神社の移転と祭りの変化 ―京都市・淀の事例―

佐藤 あかね

【要旨】

本研究は京都市伏見区淀本町にある與杼神社の秋季祭「淀祭り」を対象に、祭祀圏をフィールドに実地調査を行い、淀祭り・神輿渡御を構成する諸団体の時代による変化と変遷を記述したものである。本研究で明らかになった点は、次のとおりである。
1.現在の祭礼は、他地区からの協力を得て成り立っている祭礼が多くの割合を占めている。協力を得て祭りを開催し地域の活性化に貢献した祭りもあるが、協力を得られなかった祭りは縮小・衰退していく傾向にあり、徐々に祭りを行わなくなっていくとされている。
2.淀・納所地区は三川合流の中州であったため水害の常襲地で、河川改修が数回にわたって施されている。水垂町・大下津町においては合計2度の集落移転を行われた。かつて水垂町と大下津町の境目に鎮座していた與杼神社も河川改修に伴い、桂川の右岸から左岸へ移転・遷座している。
3.與杼神社には神輿があり、神輿渡御はおそらく江戸初期頃から行われていた。昭和に入って戦争で1度目の中断、そして戦後に担ぎ手の減少・事故により2度目の大きな中断を経験している。
4.淀の町を盛り上げるためにも神輿渡御を復活させようという氏子の努力により青年会・神輿会が発足。京都神輿愛好会や他地区の神輿会の協力を得て、神輿渡御が復活した。中断により、神社や祭りから離れていった人々の関心を再び取り戻し、祭祀圏を広げている。


【目次】

序章 ――――――――――――――――――――8          
第1章 集落移転と祭祀圏の変化 ――――――――――――― 10
第1節 第1節 淀・納所と與杼神社 ・・・・・・・・・・・・ 11
第2節 河川改修と集落移転 ・・・・・・・・・・・・・25
第3節 神社の移転と祭祀圏の変化 ・・・・・・・・・・30
第2章 淀祭りと神輿 ――――――――――― 34
第1節 神社移転以前 ・・・・・・・・・・・・・・35
第2節 神社移転以後−戦前 ・・・・・・・・・・・・・・38
第3節 神社移転以後−戦後 ・・・・・・・・・・・・・・39
第4節 神輿渡御の中断 ・・・・・・・・・・・・・・40
第5節 神輿渡御の復活 ・・・・・・・・・・・・・・41
第6節 淀祭りの現在 ・・・・・・・・・・・・・・48
結語 ――――――――――― 64
参考文献一覧  ――――――――――― 67


【本文写真から】

写真1 現在の與杼神社



写真2 神輿庫に収められた神輿3基



写真3 戦前の神輿渡御の様子(松村和彦氏提供)



写真4 提灯神輿によるゲリラ渡御の様子(松村和彦氏提供)



写真5 現在の神輿渡御の様子



【謝辞】

本論文執筆にあたって、多くの人々にご協力をいただいた。
 お忙しい中、淀・納所や與杼神社、神輿渡御についてお話を聞かせてくださった、奥村博氏、鈴木猛次氏、松村和彦氏、村上国夫氏、吉田和豊氏、ほか調査にご協力いただいた淀神輿会の皆さん、淀・納所の皆さん、神輿渡御に参加された皆さん。現在の祭礼についてお話を聞かせてくださった、奥村隆司氏、谷尾剛氏。これらの方々のご協力なしには、本論文は歓声に至らなかった。今回の調査にご協力いただいた全ての方々に、心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました。