関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

開発と竹林―千里地区の事例から―

開発と竹林―千里地区の事例から―
山崎晴香

【要旨】
 本論文では大阪府千里丘陵をフィールドに実地調査を行い、昭和30年代千里が開発される前までコメの栽培が難しいこの地で収入源となっていたタケノコおよびそのもととなる竹林が開発による大きな減少を経て、現在地域の人々によってどのように扱われているかということまでを明らかにしたものである。本研究で明らかになった点は次の通りである。

1. 千里丘陵は地形や気候などにより稲作をするための十分な水が得られなかった。

2. 水不足の解決策としてため池を作るがそれもコメ作りには足りず、果実やタケノコを栽培することで収入を得ていた。

3. タケノコの栽培は手入れの時期が稲作の繁忙期からずれているため、作業がしやすかった。専用の道具や、缶詰工場などタケノコの栽培、収穫には特徴があった。

4. 昭和30年代人口の都市への集中により、住宅開発の必要性が論じられ千里にニュータウンが作られることになり、土地が開発され竹林は消えていった。

5. 開発の後残った竹林は労力面と金銭面の問題から手入れが行き届いていないものも少なくはなかった。

6. 手入れが行き届いていない竹林は竹の病気が蔓延する、地滑りが起こる、景観が良くないなど様々な問題を引き起こす。このような問題を解決するために竹林を整備するボランティアが発足される。

7. 現在竹林を整備するボランティア団体が市に割り当てられた竹林を整備している。このような活動はただ竹林を整備するだけではなく、竹細工やイベントなどを通し地域のコミュニティの場にもなっている。

【目次】

序章 ――――――――――――――――――――5          
第1章 千里と竹林 ――――――――――――― 7
第1節 千里の概要 ・・・・・・・・・・・・ 8
第2節 地形と地層 ・・・・・・・・・・・・・9
第3節 ため池・竹・モモ ・・・・・・・・・・9
(1) ため池 ・・・・・・・・・・・・・・・9
(2) 竹 ・・・・・・・・・・・・・・・・10
(3) モモ ・・・・・・・・・・・・・・ 14
第2章 タケノコ栽培 ――――――――――― 15
第1節 佐井寺  ・・・・・・・・・・・・・・16
(1) 佐井寺集落  ・・・・・・・・・・・・16
(2) 栽培  ・・・・・・・・・・・・・・16
(3) 出荷  ・・・・・・・・・・・・・・19
(4) 缶詰工場  ・・・・・・・・・・・・・20
第2節 山田  ・・・・・・・・・・・・・・21
(1) 山田集落  ・・・・・・・・・・・・・21
(2) 栽培 ・・・・・・・・・・・・・・・・21
(3) 出荷  ・・・・・・・・・・・・・・22
(4) 缶詰工場  ・・・・・・・・・・・・・・23
第3節 上新田  ・・・・・・・・・・・・・・24
(1) 上新田集落  ・・・・・・・・・・・・24
(2) 栽培  ・・・・・・・・・・・・・・25
(3) 出荷  ・・・・・・・・・・・・・・25
(4) 缶詰工場  ・・・・・・・・・・・・・・26
第3章 開発と竹の消失 ――――――――――― 27
第1節 開発の経緯  ・・・・・・・・・・・・28
第2節 竹林の消失  ・・・・・・・・・・・・28
第3節 開発された千里  ・・・・・・・・・・29
第4章 竹害と竹の会 ―――――――――――― 31
第1節 竹林の現在  ・・・・・・・・・・・・32
第2節 竹林整備の必要性と竹の会発足  ・・・・32
第3節 竹の会の活動  ・・・・・・・・・・・・34
結語 ―――――――――――――――――――― 41
文献一覧 ―――――――――――――――――― 41




タケノコを掘る道具




缶詰工場(山田自治郷土史編纂委員会2001)より 野口昭雄氏提供



整備された竹林



竹細工



竹の会によるイベントの準備の様子



【謝辞】

本論文の執筆にあたり、多くの方々のご協力をいただいた。
 お忙しいなかタケノコ栽培のお話をしてくださった、中方敏夫氏、内山実嗣氏、山田昭冶氏、丸山氏、谷峰子氏。千里ニュータウンについてお話をしてくださった太田博一氏。そして突然のお電話にも関わらず活動へお邪魔させていただきお話を聞かせてくださった木村凡之氏、井畑氏。イベント前でお忙しいときにお時間を割いてくださった前川光宏し、大路亨氏。そしてすべての人につなげてくださり、資料もたくさん調べていただき今回の調査で一番お世話になった岡崎強一氏。これらの方のご協力なしには本論文の完成には至らなかった。協力いただいたすべての皆様に心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました。