関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

岡山市の民間宗教者

岡山市の民間宗教者

神原 竜也

【要旨】

本論文で語られる民間宗教者とは、祈禱師や拝み屋といった宗教者を差す言葉として用いている。本論文は民間宗教者として活躍されている4名の方に取材をし、岡山市をフィールドに実地調査を行なうことによって、民間宗教者がどのような方法で活躍されているのか、民間宗教者とはどのような人達なのかを調査したものである。ブログ掲載にあたり、一部人物名に関してはイニシャルにして名前を伏せている。本論文で明らかになった点は、次のとおりである。



1.今回、私は4名の民間宗教者の方とお会いし、それぞれのお話を聞かせて頂いた。4名の民間宗教者は全員、祈禱を行う事ができて、その技術を霊的な原因により困っている人達のために使用しているといった点が4名の民間宗教者全員に共通していた。私は今回の調査の中で、4名の民間宗教者についてそれぞれの特徴を見つける事ができた。 


2.整体腰痛センター長生堂の高塚進氏はがん祈禱を行っている。他の民間宗教者ならば、様々な理由を抱いた相談者が民間宗教者のもとを訪ねてくるが、高塚氏の場合はとりわけがんを治療する事に力を入れていて、がんに苦しんでいる人を救済すべく今日も活躍している。


3.実教寺の住職である秋元啓秀氏は生きている人のために何か自分が役立てる事はないかという理念に基づいて祈禱を行っている。そのため、秋元氏は自分だけが祈禱を行い、悩みを解消するのではなく、相談者にも自身の悩みについて振り返ってもらい、双方から悩みの原因を解決しようと考えている。


4.大照院の光森妙俊氏は修業の場として若い頃より石鎚山を登り続けてきた。初めは辛かったが、どんどん修業が好きになっていった。光森氏のもとには土地によって体調が悪くなる人がたくさん訪れる。ほとんどの原因となっているのは金神というカミである。光森氏は部屋の配置換えを指示し、これらの問題を解消している。弟子の近藤氏もおり、いつも共に行動し、光森氏の補助を行っている。


5.縁庵のY氏は幼少の頃より、神仏の事に興味を持っていた。そしてY氏が20歳の時に神の啓示を受ける。その後、Y氏は数々の不思議な経験を体験した後、民間宗教者の道を歩んでいく。Y氏のもとには、たくさんの悩みを持った人が訪ねてくるが、中でも神事をしている人がY氏のもとを訪ねてくる場合がある。



【目次】

序章―――――――――――――――――――――――――――――─――――7

 第1節 問題の所在‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥8

 第2節 民間宗教者とは‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥8

 第3節 フィールドとしての岡山市‥‥‥‥‥‥9

第1章 整体腰痛センター長生堂 高塚進氏―――――――――――――─――11

 第1節 整体師への道のり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥12

 第2節 独立後の高塚氏‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥13

 第3節 カミとの出会い‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥14

 第4節 がん祈禱‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15

 第5節 見えない世界‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17

第2章 実教寺 秋元啓秀氏――――――――――――――――――――――─19

 第1節 祈禱師への道のり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20

 第2節 修行内容‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21

 第3節 祈禱をする基準‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22

 第4節 祈禱までの準備‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23

 第5節 祈禱の方法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥25

 第6節 訪ねてくる人‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26

第3章 大照院 光森妙俊氏――――――――――――――――――――――─38

 第1節 祈禱師への道のり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥39

 第2節 修行内容‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥41

 第3節 カミがかり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥42

 第4節 訪ねてくる人‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥43

 第5節 弟子 近藤氏‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥46

第4章 縁庵 Y氏―――――――――――――――――――――――――――50

 第1節 祈禱師になるまで‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥51

 第2節 不思議な体験‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥52

 第3節 身体に表れる異常現象‥‥‥‥‥‥‥‥53

 第4節 祈禱師への道のり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥54

 第5節 修行内容‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥55

 第6節 訪ねてくる人‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥55

 第7節 不思議な現象‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥57

 第8節 祈禱の方法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥57

 第9節 ミサキとコンガラさま‥‥‥‥‥‥‥‥58

結語―――――――――――――――――――――――─――――――――――64

文献一覧―――――――――――――――――――─――――――――――――66


【本文写真から】


秋元氏が祈禱で用いる3つの道具。真ん中の巻物は修行の時に書かれた写経である。右の道具は火打石で、左の道具は木剣と呼ばれる道具である


光森氏が四国八十八箇所参りをした際に、撮られた写真である


Y氏が20歳の頃、神の啓示によって、自宅の屋根裏から発見した仏像


【謝辞】

本論文における調査では、整体腰痛センター長生堂の高塚進氏、実教寺の秋元啓秀氏、大照院の光森妙俊氏、縁庵のY氏には本論文を執筆するにあたり、多くの貴重なお話を聞かせて頂きました。お忙しい時間の中時間を割いて下さり、4名の方には心よりお礼を申し上げます。また、上記以外の方々にも、調査の過程でお世話になったすべての方にお礼を申し上げます。