関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

グループ巡検報告:出石1

みなさん、こんにちは。
出石班は、7月24日〜25日にかけて、兵庫県北部に位置する豊岡市かばんの町豊岡〜小京都出石に巡検に行ってきました。豊岡市は柳行李(柳で編み、つづらのようにつくったかばん)やかばん(皮製)で栄えた町で、出石はかつて出石城の城下町として栄え古い街並みを残しており、小京都にも登録されている町です。そんな町々の巡検風景、そして発見を皆さんにご紹介したいと思います。


【メンバー
呉美里、川島康太郎、谷岡優子、山本香奈



【日程】
一日目:カバンストリート(豊岡)→出石城周辺散策(酒蔵、宗鏡寺(すきょうじ)、赤門、
加藤弘之生家など)
二日目:ガイドさんによる出石城跡とその周辺解説と質疑応答→出石神社



【一日目】
朝10:00に西宮北口を出発するも、かばんの町豊岡に到着したのは、昼13:00。
当日開催されていたイベントには間に合いませんでしたが、気を落とさずカバンストリートを歩いてみましょう。普通の商店街の中に数店鞄の商店がありました。


看板の隣にかばんの自動販売機発見。

かばんはやや小さい小学生の上履き袋といった感じでしょうか。取っ手の部分は皮製。

町で入手した地図やガイドを見てみると豊岡はかばんとお菓子の町として売り出そうとしているようです。菓子の町の部分はやや造られた文化のように思われます。

お菓子の町の根拠は、中島神社で祀られている祭神、田道間守命(たじまもりのみこと)から。「古事記」や「日本書紀」によると、田道間守命は第11代垂仁天皇の御代、常世の国より不老長寿の妙薬、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ、現在の橘ではないか)を持ちかえったとされる人物で、菓子の神として全国の菓子業界から祀られているそうです。田道間守命は後述する但馬開発の祖神、出石神社の祭神天日槍(あまのひぼこ)の孫にあたります。

柳行李が発達したきっかけは、元々沼地が多くその近辺には柳が多く生えていました。かつこの但馬という国は悪天候としても有名で冬は大雪に見舞われます。そこで、冬の間でも家の中で出来、原材料が溢れある柳行李が発達したとのことです。
しかし、この柳行李は現代の短期利用、大量消費の時代にはあまり需要が無く、衰退の一途をたどっています。
どちらも観光における重要な要素「見る、観る、味る、魅る」からすると、前者は新し過ぎて何処にでもある、後者は時代の流れにそぐわないという点から観光資源として難しく、町おこしとして利用しにくいのではないでしょうか。

ちなみに上記4つの観光要素のうち「魅る」は2日目にお話を伺った観光協会の加藤さんより“人間・ひと”を魅了する、または魅せられる“人間・ひと”こそが一番の資源だとご説明されたのでここで付け加えておきます。

さて、今回の巡検のメインである但馬の小京都、出石に移動。出石観光センター付近に着くと、すぐ傍に町を象徴する「辰鼓楼(しんころう)」が見えます。時計の無いかつては寺の鐘の音が住民に時を知らせていました。それが時代の移り変わりと共に太鼓が時を知らせるようになりましたが、それも出石藩が廃止されたのを機に途絶えてしまいます。現在は明治14年藩医の池口忠恕氏が大時計を寄付し、それを辰鼓楼の北面に取り付けられ、時計台へと変化し、現在も出石の象徴として町民や観光客から愛されています。

では、出石城下町周辺を散策に向かいましょう。

観光地の中に新鮮で美味しそうな野菜が売られていました。



某スーパーマーケットも吃驚の値段設定、一人暮らしのメンバーの眼が光ります。近隣に住む方は車で豊岡まで出て大型スーパーで大量に購入し、足りないものを付近のお店で購入するそうです。これを利用した新たな観光資源を造り出せるのでは?と尋ねたところ、「確かに観光資源にはなります。でもこのくらいの野菜は探せば何処にだってあるし、これを利用した新しい何か造ろうと思っても、材料さえあれば何処だって出来るでしょう。そんなものはすぐに観光客から飽きられるんです。」とのこと。だから大々的に売り出さないそうです。


次はこの出石の町のイメージカラーの基にもなった酒蔵にお邪魔しました。



建築家の宮脇檀氏がこの町に訪れた際にこの土蔵を見て「この町のイメージカラーはコレだ」と決めたことから、この町には様々な建物にこの色が採用されています。
所々にある非常口のような扉は、川島君の解説によると「酒造は菌、温度、湿度に左右されるもの。だから、微調整のためにあのように頑丈で開閉が可能な窓が付けられている」そうです。成程、勉強になりました。この酒蔵では現在酒造の一部の工程しか行っていないそうです。このような酒蔵のお話や様々な出石のお話を楽々鶴の試飲をしながら聞かせて頂きました。

この後は、出石における有名人物に所縁ある土地巡りをしました。

宗鏡寺(別名:沢庵寺)



赤門

東大初代総長加藤弘之生家、赤門、沢庵和尚が再興した宗鏡寺。この他に出石が誇る著名人として、日本における天気予報の創始者桜井勉、二・二六事件後の粛軍演説で有名な斉藤隆夫が挙げられます。このように出石ではどちらかといえば学問の分野で優秀な人物を輩出してきました。この所以とは何なのでしょうか。答えは二日目にて。


【一日目終了】