関西学院大学 現代民俗学 島村恭則研究室

関西学院大学大学院 現代民俗学 島村恭則研究室

大阪の繊維産業を担うまち ―船場・箕面・新大阪―

大阪の繊維産業を担うまち ―船場箕面・新大阪―
中前亜侑子

【要旨】

本研究は、大阪においての繊維産業、中でも主にその流通を担うまちについて、船場箕面、新大阪をフィールドに実地調査を行い、船場センタービル、箕面船場繊維団地、新大阪センイシティーなどでのインタビューによって、大阪の繊維を支える3つのまちの特色や、それぞれに異なる役割、そしてこれらの相互関係を明らかにしたものである。

本研究で明らかになった点は、つぎのとおりである。

1.大阪における「繊維のまち」は、船場だけではない。

2.船場は、最も古く歴史を遺す繊維問屋街である。現在も船場センタービルをはじめ、丼池ストリートやその他の商店街など、昔ながらの街並みとともに、卸しという役割を守りながら繊維流通の核を担う。

3.箕面は、船場から移転した問屋商人たちが形成した繊維団地である。職住一体の繊維団地コムアートヒルとして、本町船場オフィスの物流部署を主に担いながら、まちづくりにも関与している。

4.新大阪は、梅田の闇市を原点とする繊維問屋街であり、闇市の統制下で自由商売をしていた問屋商人たちの自家店舗という夢を叶えた場所である。現在は、問屋でありながら小売という役割をも重んじ、一般消費者へのアプローチにも力を入れている。

5.特に大きな繊維問屋街があるのは船場と新大阪であるが、両者は特に提携するわけでも、競り合うわけでもなく、互いの存在をあまり意識はしていない。船場は組織だった歴史ある問屋街、新大阪は闇市あがりの自由商売の問屋街と、異なる特徴を持つ同業者として、両者はつかず離れずの距離を保っている。

6.船場が本社及び店舗、箕面が物流部署という形態の企業もありながら、新たな企業が箕面に本社を置くことも近年では多く、箕面は大阪の流通の要となるべく成長しつつある。

7.船場は卸し、箕面は物流、新大阪は小売と、3つのまちはそれぞれ大阪の繊維産業を支える3本柱として機能しながら、繊維卸業界の低迷に立ち向かい、模索を続けている。

【目次】

序 章──────────────────────────────―1
 はじめに………………………………………………………………………1
 第1節 大阪と繊維…………………………………………………………1

第1章 船場 ―歴史ある繊維問屋街────────────────――5
 第1節 船場というまち……………………………………………………5
 第2節 繊維問屋街の成長…………………………………………………6
 第3節 戦後の復興都市計画……………………………………………12
 第4節 船場センタービル………………………………………………15

第2章 箕面 ―物流を担う繊維団地─────────────────33
 第1節 箕面というまち…………………………………………………33
 第2節 船場繊維団地……………………………………………………33

第3章 新大阪 ―闇市出身の繊維問屋街――─────────────49
 第1節 新大阪というまち………………………………………………49
 第2節 梅田の闇市………………………………………………………49
 第3節 新大阪センイシティー…………………………………………57

結 語─────────────────────────────――71

文献一覧───────────────────────────―――73
あとがき───────────────────────────―――75

【本文写真から】


写真1 船場センタービル

写真2 センタービル館内

写真3 箕面船場繊維団地

写真4 新大阪センイシティー内のエプロン専門問屋

【謝辞】
本論文を完成させるにあたっては、非常に多くの方にご教示賜りました。インタビューや文献収集にもご協力賜った株式会社大阪市開発公社管理課管理課長の勝田好広さん、協同組合新大阪センイシティー総務部門マネージャーの前川昌史さん、大阪船場繊維卸商団地協同組合の皆様、また自身のライフヒストリーをお話し下さった新大阪センイシティーの店舗の皆様、船場センタービルの店舗の皆様。本論文における調査にご協力賜った全ての方々に、心より感謝の意を申し上げます。本当にありがとうございました。