2014年度 社会学研究演習Ⅰ セミナーガイド「島村恭則ゼミ」
【研究テーマ】
日本と世界のフォークロア
【研究内容】
フォークロア(folklore)とは、何らかのコンテクストを共有する人びと(これをfolkといいます)の間で生み出され、生きられた、経験(experience)・知識(knowledge)・文化(culture)のことであり、わたしたちの身の回りはもちろんのこと、世界のいたるところに見出すことができるものです。
このフォークロアについて、フィールドワークを主たる方法として研究する学問が、「フォークロア研究」(folkloristics)で、日本では、長らく「民俗学」の名で呼ばれてきました。「フォークロア研究」は、伝統的な「民俗学」の成果も批判的に取り入れつつ、より広く、現代的な視野でさまざまな事象を研究対象として研究を進めている学問です。
ゼミでは、「フォークロア研究」の基礎から学び始め、徐々に個人の関心あるテーマを見出して調査と研究を深めます。そして、最終的には、2年間の研究成果を卒業論文に結実させます。
母語によって精密な調査を行なうことがフォークロア研究の武器となっているため、調査実習や卒業論文の調査フィールドは、原則として日本国内ですが、ただし、研究の視野を広げ、新たな理論的展望も得るべく、アメリカ(およびドイツ)をはじめとする世界各地のフォークロア研究の成果、理論も学んでいきます。とくに3年生の春学期には、以下で述べるように、アメリカの大学1年生向けの教科書を使いながら講義とグループワークを実施します。
フィールドワーク、地理、歴史(日本史・世界史)、比較文化などに関心のある人にとっては、たいへん面白いゼミになるでしょう。
【演習の運営】
3年春学期:フォークロア研究の基礎的な枠組み、方法論を身につける。アメリカの大学の1年生の授業で使用されている教科書“Living Folklore”を共通テキストにし、講義およびグループワークを実施。グループワークは、テキストの内容を理解した上で、グループ(4名ごと)でfollow upリサーチ(ウエブサイト上の情報および文献による)を行ない、プレゼンテーション。
なお、この共通テキストは、非常にわかりやすい英語で書かれており、また昨年度のゼミですでに一度翻訳が行なわれているため(そのときのすべてのレジュメを授業で配布します)、みなさんが英文翻訳そのものに多くのエネルギーを費やすことにはなりません。グループワークでは、英文翻訳そのものではなく、英文テキストの内容を立体的に把握し、その成果を具体的な研究へとつなげてゆくための日本語による議論が中心となります(英語がまったく読めない人(読みたくない人)がこの授業に取り組むことは不可能ですが、大学入試レベルの基本的な英文が読める人ならば、まったく問題はありません)。
3年秋学期:①フィールドワーク(社会調査実習)。11月に4泊5日の合宿形式で実施。これまで、富山市(2013年度)、沖縄県宮古島市(2012年度)、台湾花蓮市(2011年度)、小樽市(2009・10年度)で実施。ゼミ生一人ひとりがテーマを設定して現地調査。レポートをまとめて、ゼミのホームページで公開。②卒論へ向けての個人研究発表(卒論テーマを検討)。
4年春学期:①卒論へ向けての個人研究発表、②卒論個人指導。
4年秋学期:①卒論個人調査、②卒論合宿(合宿先の巡検を兼ねる)、③卒論執筆・提出。
毎年のことですが、島村ゼミは、やる気のある人、自分を向上させたい人にとって、非常によい環境の場になっています。ゼミサイトを見ればわかるように、ゼミ生同士の仲が非常によく、相互に刺激しあって自分たちを成長させています。大学生活後半の2年間が充実したものになるよう、みんなで楽しいゼミをつくりましょう。
【過去のゼミ生による実習レポート題目】
「宮古島のミキという飲み物」「宮古島の呉服店・洋品店」「宮古上布の民俗誌」「伊良部島佐良浜地区の追い込み漁・アギヤーを行う漁労集団」「海人草と伊良部島」「佐良浜の神々とユークイ」「下里公設市場の民俗誌」「旅館から見た小樽」「小樽の喫茶店―老舗と革新派―」「祝祭としての運動会」「オタモイの記憶―遊園地と地蔵―」「生き残った小樽の和菓子屋たち」「最後のガンガン部隊―小樽の行商人「吉田のおばあちゃん」の暮らしと思い―」「小樽まつり―神社のまつりとまちのまつり―」「ハマカセギの男たち―小樽港と港湾荷役労働者―」「ムラサキの運行を支えた鉄道員」「会費で成り立つ結婚式」「水道局の記憶―小樽の「水道数え唄」から―」「 『型』でつながる寺社と和菓子屋」「小樽に広がる銭湯文化」「『ソーラン節発祥之地』はどこか?―ソーラン節と余市・積丹―」 「『火災都市』小樽と『ブン公』伝説」ほか多数。
【過去のゼミ生による卒業論文題目の一例】
「境のまち西院(さい)の近代史―京都市右京区西院地区の150年―」「『天使突抜』から見た京都の天神信仰」「豊中の特飲街―占領期伊丹ベースをめぐる都市民俗誌―」「湖水伝承の創生と伝承―神戸市淡河の事例―」「佐渡の稲作起源伝説―土佐三助と加賀お菊―」「祭り屋台の変遷―播州三木秋祭りの事例―」「だんじりの街―岸和田祭礼民俗誌―」「火祭りとまちの人々―池田市の『がんがら火』の事例―」「墓に立つ市―大阪・河内地域の『墓市』について―」「佐野踊りと泉佐野」「よみがえる修験の道―大峰南奥駈道の再生をめぐって―」「『熱心な人たち』とお大師講―佐賀県旧北波多村における講の存続をめぐって―」「マチと飴―松山市における飴行商をめぐる民俗誌―」「振り売りとガンガン部隊―輪島と小樽の行商人たち―」「『いただきさん』の民俗誌―港町高松における鮮魚行商人―」「大和売薬の世界―奈良県における配置薬行商の歴史と民俗―」「田代売薬の近代――久光製薬の事例を中心に―」「『近江商人』の虚像と実像」「大阪の菓子業者と伊予西宇和郡」「市場街の生活誌―佐世保市戸尾市場街をフィールドとして―」「「大阪港における水上生活者」「突放―鉄道貨物作業員の『技』の世界―」「水道局―職人集団の民俗誌―」「電鉄社員の家族史/誌―阪神電鉄一家3世代の淡路・阪神・台湾―」「渡海船と島の人々―芸予諸島の事例―」「『困窮島』という神話―愛媛県二神島/由利島の事例―」ほか多数。学問的に意義のあるものなら、テーマは基本的に自由に設定できます。
【参考文献】
Sims, Martha C. and Stephens, Martine. 2005. Living Folklore: An Introduction to the Study of People and Their Traditions. Logan: Utah State University Press.
【備考】
1.ゼミの選考は、研究計画書と面接によります。面接は1人20分実施します。面接の日時は、個別に相談して決定します。そのために、10月15日(火)12:45〜13:25、10月16日(水)12:45〜13:25、10月17日(木)12:45〜13:25のいずれかに島村研究室に行き、面接日時調整のための相談をしてください(ここで決定した日時に面接を実施します)。
2.研究計画書の内容についての補足的質問や緊急の連絡などが行なえるよう、「研究演習Ⅰ選択希望届」提出後、当日中にtshimamuraアットマークkwansei.ac.jp(アットマークは、@に変えてください)にメールを出してください(件名欄に「研究演習Ⅰ選択希望・氏名(自分の氏名を書く)」と記載し、本文には、氏名と自己紹介(10行程度)を書いてください)。メールの送信がない場合、選考の対象外となるので必ず送信すること。
3.ゼミ見学は、ゼミ選択期間中の火曜日4・5限にE-201で可能です。また、ゼミ選択にあたって、さらに詳しい話を聞きたい場合は、月曜日3限のオフィスアワーに研究室を訪ねてください。
4.ゼミサイトもあります。「関西学院大学社会学部 島村恭則ゼミ」で検索すると出てきます。ゼミ活動の様子などが載っていますので参考にしてください。